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豊かな未来のきっかけを届ける

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サステナブル・ホスピタリティ:ホテル業界の世界最先端のサステナブルな取り組み7選

ニューロマジック

世界がサステナブル ~持続可能な取り組み~ の必要性やその緊急度をますます認識する中で、ヨーロッパのホスピタリティ業界は変化をもたらすために歩み出しています。

豊かな観光資源を持ち、巨大なマーケットであるヨーロッパの観光業界は、サステナブル・ホスピタリティのもと、カーボンニュートラルな未来へコミットメントを掲げ、サステナブルな観光の世界的リーダーとして台頭しています。今回は観光業の中でも強い影響力を持つ「ホテル業界」における数々のアイデアと取り組みをリサ―チしました。

ホテル業界でサステナブルな取り組みがさまざまに展開されている背景には2023年3月に施行された「欧州グリーンディール」があり、このアジェンダを推進する上で極めて重要な役割を果たしています。

ヨーロッパのホテルはまさにその最前線に立ち、ゲストに忘れがたいホテルステイを提供しながら同時に環境負荷も削減する、革新的なソリューションに取り組み始めています。

この記事では収益性の向上・収益の増加から、将来を見据えた投資や長期的なエネルギー供給の確保まで、「収益」と「地球」の両方にプラスの影響を与えている効果的な事例、最新のケーススタディを集めました。革新的なテクノロジーの導入からその評価基準まで、ヨーロッパのホテルはサステナブルな未来にむけて優れた先例を示しています。

それではデンマーク、ドイツ、ポルトガル、アイルランド、スウェーデン、ノルウェーから刺激的で学びの多い、7つのホテルの事例をみてみましょう。

1. Crowne Plaza Copenhagen Towers
コペンハーゲン、デンマーク

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【1,400平方メートルのアトリウムに2,900以上の植物】

「クラウンプラザ・コペンハーゲン・タワーズ」は、サステナビリティにおいてデンマークを代表するホテルです。客室数366室のこのホテルは、サステナビリティを第一に考えて設計・建設され、デンマーク初のカーボンニュートラルホテルとして、低エネルギー基準クラス2(Low Energy Class 2)の認定を受けています。

エネルギー消費の大幅削減のためにホテルでは、外観のデザイン性を損ねない「建物一体型のソーラーパネル」、室内の温度差によって送風量を調節し、温度をコントロールする「可変換気システム」、電源のオンオフはもちろん、照明の光量・色合いも調整する「インテリジェント照明」などさまざまな対策を実施しています。なかでも特筆すべきは、「帯水層熱エネルギー貯蔵」として知られる地下水冷暖房システムです。このシステムは、夏の間は地下水を利用してホテルを冷やし、冬の間は余分な熱を蓄えて利用するもので、冷暖房エネルギー使用量は90%も削減されました。
地下水システムへの投資額は160万ユーロ 、日本円で約2.5億円(※1)ですが、この投資の回収期間は6・7年と試算されており、環境への影響を最小限に抑えることが長期的なコスト削減につながることを実証しています。


2. Radisson Blu Hotel
フランクフルト、ドイツ

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【円形の外観が目をひくラディソン・ブル・ホテル】

ドイツ、フランクフルトの「ラディソン・ブル・ホテル」の取り組みも際立っています。400室以上の客室とスイートルームを擁するこのホテルは、以前は膨大なエネルギー需要を抱え、外部からの送電により電気をまかなっていました。しかし2017年、ドイツを代表するエネルギー会社E.ONと提携し、ヨーロッパで初めて産業用サイズの燃料電池を使用した低炭素型ホテルとして生まれ変わりました。

FuelCell Energy Solutionsが提供するこの燃料電池は、亜酸化窒素や微小塵埃などの汚染物質を最小限に抑える非燃焼プロセスによって電気と熱を生成します。この革新的な技術により、ホテルは必要なエネルギーの80%を自家発電し、外部エネルギーへの依存を減らすことに成功しました。(※2)

このプロジェクトは、熱電併給法とドイツ連邦運輸・デジタルインフラ省からの補助金による財政支援を受けています。初年度は約6万ユーロ(日本円で約940万円)のエネルギーコスト削減を達成し、10年間の契約期間中約75万ユーロ(日本円で約1億2000万円)の節約になると推定されています。


3. 25hours Hotels
ハンブルク, ドイツ

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【25hours Hotel Hamburg「HAFENCITY」のレストラン「HEIMAT」】

サステナブルな取り組みの一環として、「25hours Hotels」は、2024年までに全てのホテルで持続可能性認証(※3)を取得することを目指し、さまざまな取り組みを実施しています。ホテルグループはAktion Baum、Plant et Trae、treedom、Emirates Environmental Groupなどの組織と協力し、植樹プロジェクトを積極的に支援し、世界の生物多様性保全に貢献しています。

さらに環境への負荷を軽減するため客室の清掃を減らし、節約した資源を植林活動に充てるオプションをゲストに提供しています。このプログラムを通じて既に約34,000本の木が植樹されました。また、余った食料や料理を安く販売することで食品ロスを削減する、ヨーロッパで人気のアプリToo Good To Go(※4)などの団体と提携し、食品廃棄物を最小限に抑えています。さらに運搬にかかるCO2削減のために可能な限りの地産地消を目指し、オーガニック、ベジタリアン、ビーガンのオプションを提供するなど、食の分野でのコンセプトの強化にも力を入れています。

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【25hours Hotel Hamburg「Altes Hafenamt」の象徴的なハンギングバスケット】

25hours Hotel グループでは2022 年半ば以降、使い捨てプラスチックの使用を控えています。プラスチックフリーのランドリーバッグ、髭剃りセット、歯ブラシ等がリクエストに応じてフロントで配布され、 代替品のホテル内での提供は既に80%を超えています。他にもドイツ語圏の RECUP および REBOWL プログラム (使い捨て食品包装材の使用を削減する To-Go デポジット システム) にも参加しており、宿泊客が飲み物を補充できるよう、すべてのホテルにウォーター ディスペンサーを設置。 ボトルは無料で提供されるなど、"100% プラスチックフリー"を目指して継続的な取り組みが行われています。

他にもホテルグループ全体でサステナブルな移動手段も重視しており、自転車、電動スクーター、電気自動車の充電ステーションも提供しています。ゲストに快適なホテルステイを提供すると同時に、「責任ある消費」についても考える機会を与えています。


4. Martinhal Lisbon Oriente
リスボン、ポルトガル

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【海辺にもほど近いリゾート、マルティナル・リスボン・オリエンテ】

ポルトガルの「マルティナル・リスボン・オリエンテ」は、サステナブルなデザイン・環境のガイドラインとなるホテルです。緑地とテラスガーデンに重点を置いた建築は熱性能の向上とエネルギー消費の削減に貢献しています。

植物や植栽で構成された緑のファサードが特徴で、植物が温度を調節し、視覚的に魅力的な環境を作り出すのに役立っています。例えば気候変動に強く、温室効果ガスをよく吸収するオリーブの木にはアリや蜂などの昆虫、さまざまな鳥類が集い、そこからまた新たな植物が育まれるなど、サステナブルな生態系をつくりだすことがスペインの調査(※5)でも明らかになっています。ホテルでは敷地内に戦略的・計画的にオリーブの木を植えることで生物多様性を促進し、環境に優しい空間を創り出しています。

またこのホテルは日々の運営においてもサステナビリティを重視しています。ホテルにはエネルギー効率の高いシステム、節水対策、廃棄物管理戦略が組み込まれ、環境負荷を最小限に抑えながら、ゲストにラグジュアリーでエココンシャスな体験を提供しています。


5. room2 Belfast
ベルファスト、アイルランド

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【お洒落で居心地のよい「room2 Belfast」】

アイルランドの「room2 Belfast」は、1泊の滞在から1年の長期滞在まで対応する、サステナビリティとユニークなデザインアプローチを組み合わせたホテルです。この施設は、サステナブルで快適な環境をゲストに提供するため、様々なグリーンデザインの展開に取り組んでいます
ホテルでは太陽光発電と100%再生可能エネルギー源を積極的に使用、太陽光発電の活用により従来のエネルギー源への依存を大幅に減らし、二酸化炭素排出量を最小限に抑えています。

さらにホテルでは食材や資材の地元調達を優先し、地域経済の支援・輸送関連のCO2排出量を削減しています。このホテルはサーキュラーエコノミー(循環型経済)のアプローチを採用し、リサイクルやアップサイクルの要素をデザインに取り入れ、滞在中のゲストにも提案しています。

さらにホテルでは、ゲストの健康と快適さを優先する「WELL建築原則(※6)」を遵守しています。このホテルには自然採光、生物親和性の高いデザイン要素、空気品質管理対策などの機能を取り入れ、ゲストが健康的でリフレッシュできるような体験を提案しています。

6. Scandic Go
ストックホルム、スウェーデン

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【ポップなデザインとグリーンが印象的な「Scandic Go」】

「Scandic Go」は2023年9月にオープン予定のスウェーデンのホテルです。このホテルは、スマートな宿泊施設の提供のために、環境に優しくエネルギー効率の高いソリューションを大切にしています。

サステナビリティをホテルの中心に据え、例えばコーヒーのかすから作られた椅子や、リサイクル・テキスタイルから作られたテーブルトップなど、リサイクル素材を積極的に使用しています。このホテルでは、施設内で使用されている物品を分解し、繰り返し再利用できるようにすることで、さらなる一歩をふみだしています。この先進的なアプローチは、廃棄物を減らすだけでなく、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方を促進します。

また、新しい素材をテストし、耐久性のある素材への投資やCO2排出量の少ない家具を選ぶことに重点を置いています。このような意識的な選択は、「環境に優しいホテル」という体験に貢献し、ゲストはサステナビリティを認識しながら滞在を楽しむことができます。

このホテルは快適でリーズナブルな宿泊施設を提供しながら、環境への負荷も軽減することを目指しています。

7. Villa Inkognito
オスロ、ノルウェー

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【クラシカル ✖ ラグジュアリー ✖ サステナブルな「ヴィラ・インコグニート」】

ノルウェーのオスロにあるラグジュアリーホテル、「ソンマーロ・ホテル」の一部、「ヴィラ・インコグニート」は、「サステナブルな贅沢」を再定義して提案しています。このホテルは、環境への影響を最小限に抑えるデザインと運営に重点を置き、サステナビリティとラグジュアリーが調和・共存できることを示しています。

ホテルは、日々の運営の指針となる9つの基準を示す「ソンマーロ・スタンダード」に従っています。これらの基準には、リサイクルへの取り組み、キッチンやゲスト用アメニティに環境に優しい原材料を使用すること、ヴィラの修復にも環境負荷の少ない素材を選択するなど、サステナビリティを実現するためのさまざまな要素が含まれています。

またオスロの豊富な日照を利用した太陽光発電を上手に活用し、100%再生可能エネルギーを使用、二酸化炭素排出量をさらに削減しています。

さらに、スタッフのメンタルヘルスの維持も大切に、地元企業や地域社会の取り組みへの支援も行っています。例えば8時間ルール(8時間の仕事、8時間の遊び、8時間の睡眠)により、従業員のワークライフバランスも実現。働きやすい環境を育むことで、従業員・ゲストの両方にポジティブで楽しい経験を生み出すよう努めています。

極上のラグジュアリーな滞在を提供するだけでなく、"サステナビリティ"の視点を取り入れることで新しいおもてなしの基準を打ち立て、ラグジュアリーホテル業界における「環境に優しい未来」への可能性を示しています。

終わりに

この記事では、ゲストへ魅力的なホテルステイを提供すると同時に環境負荷の削減も進めているヨーロッパのホテル業界の革新的なケーススタディを取り上げました。エネルギー効率の高い技術やその認証、デザイン、パートナーシップに至るまで、世界の観光業界が見習うべき明確な指針を示しています。サステナビリティを優先することで環境保全に貢献することはもちろん、収益性、コスト削減、顧客満足度といった面でも利益をもたらし、ホスピタリティ業界における責任ある未来への道すじを提示しています。

私たちは旅行者として、環境に配慮したホテルを選ぶことで、サステナブルな取り組みを支援し、奨励する力を持っています。現代、そして次世代のために、より環境に優しく、より持続可能な世界を創造するために力をあわせましょう!そうすることで、共に大きなインパクトを与え、ホスピタリティ業界とその先にある明るい未来を形作ることができるのですから。

元記事は こちら

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サステナビリティの転換期にある今、ニューロマジックのSX(サステナビリティ・トランスフォメーション)グループは、サービスデザインとリサーチの専門知識を活かしてSXへの第一歩を支援いたします。私たちは、持続的かつサステナブルな影響力を生み出すために、リサーチ、目標設定、パートナーシップの促進、戦略の共創を行います。

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