インドのマクドナルドが、「色味控えめ」メニューを見せる理由とは
真っ赤に熟したトマト、フレッシュな緑色のレタス、黄色いチーズ。彩が鮮やかで、美味しそうなメニューに食欲をそそられる人は多いだろう。どこかへ食事に出かけたときに、メニューを見るだけでわくわくする。しかし、色弱(※)の人にとってそれは当たり前の感覚ではない。
いわゆる「色弱」とは、目の網膜にある3種類の錐体細胞、L錐体(赤)、M錐体(緑)、S錐体(青)を感じる細胞のうちのいずれか、すべてが欠損しているか、不完全な場合に使われる言葉だ。信号の色の違いがわかりにくかったり、お肉に火が通っているかを判断しにくかったり、日常生活の中でも不便なことがあるという。
インドでは人口の約5%にあたる約7,000万人が色覚異常を持っている。インドのマクドナルドによると、彼らはメニューを見たときに色を認識しにくいため、美味しそうに見えないことがあるという。
そんな中、インド・マクドナルド(West & South)は、色弱の人々がより利用しやすく、楽しく注文できるよう、EatQual 2.0という新しいイニシアチブを始めた。3年前にローンチした同社のインクルーシブ・プラットフォームであるEatQualを基盤としており、デリバリーアプリ(McDelivery)とウェブサイト上で新機能を利用することができる。
具体的には、色弱のユーザー向けに「緑-赤」「赤-緑」「青-黄」の3つの色強調オプションが用意されている。ボタンを押すだけで、よりはっきりと色が表示されるので、色弱のユーザーも色鮮やかなメニューを見ることができる。特別なアルゴリズムを採用し、各ユーザーに適した色でメニューを表示することで、より多くの情報を得た上で注文を決めることができるのだ。
この取り組みは、毎年10月の第2木曜日に設定されている「世界視力デー」に開始され、ブランドビデオも公開されている。色弱である写真家Aniruddh Kothari氏が登場する動画では、色弱の人が見る世界が描かれている。
このような企業の取り組みが増えている一方で、個人としてできることはあるだろうか。例えば、プレゼンテーション資料をつくるときに、強調したい部分があるとする。そんなときは、赤字で表示するだけではなく、下線を引いたり、太字にしたり、色以外で変化をつけることで、色弱の人でも区別しやすくなるという。
この例のように、とても小さいと思える工夫でも、色弱の人にとっては大きな変化となるだろう。あなたにとっての「当たり前」を、違う視点から見直し、少し変えるだけで社会はより良い方向に向かっていくかもしれない。
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【参照サイト】
NPO法人カラーユニバーサル機構 色覚の呼称
Risa Wakana
Risa Wakana。都市的な生活の中で、自然とつながりながら生きる方法を模索している駆け出しフリーランス。衣食住のサステナビリティに関するトピックに関心があり、日々の暮らしの中での"三方よし"を目指している。好きな言葉は「Sense of Wonder」。現在はスペインに長期滞在中。