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「未来の移動手段はペダルにあり」ヨーロッパの自転車革命

ニューロマジック

「サステナブルな交通手段」ときいて、あなたは何を思い浮かべますか?
EV自動車? 水素自動車? 電車? キックボード?

気候変動や環境問題に直面する中で、ヨーロッパはサステナブルな交通手段として早くから「自転車」を取り入れてきました。これはSDGsともシームレスに連携しており、差し迫った世界的課題への対策として、先見の明のあるアプローチと言えます。

事実、自転車の利用によりEU 内では年間 1,600 万トン以上の CO2排出量の削減に成功、これはクロアチアの国全体の年間総 CO2 排出量に相当します。またガソリンや電気代がかからず、導入に際しての初期費用や整備費などのコストも抑えられるため、年間 約6 億563 万ユーロが節約できると算出されています。(※)

今回はそんな、ヨーロッパ諸国の"自転車革命"、各国の具体的な取り組みについて紹介します。

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SDGsと密接に関わる交通手段

SDGs11、「住み続けられるまちづくりを」とは、地球上に住むすべての人々が住み続けられるまちづくりを進めていくことを掲げた目標です。この目標としっかり合致する"自転車革命"は、都市をいちだんとサステナブルで住みやすい空間に変化させています。さらにSDGs13「気候変動に具体的な取り組みを」にもヨーロッパ諸国は熱心に取り組み、成果を挙げていますがこれもまた、二酸化炭素排出量削減の手段として自転車が有効な手段として認知・実践されていることとひとつながりと言えます。さらに都心部でのサイクリングの急増は、健康と福祉を促進することで、SDGs3「全てのひとに健康と福祉を」にも寄与しています。自転車が日常の交通手段に組み込まれることで、都市は人々により健康的な ライフスタイルを提案し、身体活動を促進し、公衆衛生上の成果も向上させるコミュニティを構築しています。

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公共施設、ガス・水道、道路・線路、電気などのインフラは、SDGs 9 「産業と技術革新の基盤を作ろう」と密接に関わり、サステナブルな交通手段の取り組みを成功させる上で極めて重要な役割を果たしています。大都市が積極的に革新的なアプローチを採用することは世間にむけてパイオニアとしての役割を果たし、サステナブルな開発の道すじを創り、効率的で環境に優しい移動手段が当たりまえ、という未来を育みます。

交通手段としての自転車の推進においては、SDGs 10「人や国の不平等をなくそう」も反映させ、補助金やリーズナブルなシェアサイクルなどの制度を整え、自転車が特権ではなくアクセスしやすい公平な交通手段であることを保証、提唱しています。

国をあげてのサイクリング戦略

2021年、サイクリング推進のための「欧州マスタープラン (the Pan-European Master Plan for Cycling Promotion.)」が採択されました。この計画は、EU加盟27カ国すべてを含む、ヨーロッパ54カ国に及んでいます。
このプランの最終目標は、「すべての国で自転車利用を大幅に増加させ、2030年までに地域の自転車利用を倍増させる」ことです。この革新的なビジョンを達成するために、各国は指定された期限までに国内のサイクリング政策の策定と実施が求められています 。

目標達成のためには、政府の政策を調整することも含まれます。 ヨーロッパのなかでもドイツとハンガリーは、目標の明確さとその内容が際立っています。例えばドイツでは2002年に「国家自転車計画(National Cycling Plan)」が策定されるなど、自転車はサステナブルで利点の多い移動手段の柱として早くから位置づけられています。2つの国に共通する要素には、「サイクリングを公共交通と統合する」「全国サイクリングネットワークの開発」「全国サイクリング担当官の任命」「学校での自転車教室(必修科目)」「サイクリングに関する国家研究プログラムへの資金提供」「表彰を通じた優良事例の促進」などがあげられます。さらに 具体的な戦略としてはデータ収集、子供向けの教育プログラム、盗難防止策に焦点を当て、自転車利用を促進するための法の整備や財政的支援にも積極的に取り組んでいます。

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EU諸国に共通する優先課題

1. データの改善とモニタリング:
フィンランド/モニタリング目標のためのオープンソースデータを重視
ドイツ/"バイシクル・モニター "は、サイクリング関連の定期的な調査情報を提供

2. 教育プログラム:
サイクリング・トゥ・スクールの取り組みを通じて、子供たちを対象に啓蒙活動を実施

3. 盗難防止対策:
ドイツ・フィンランド/安全な駐輪場や登録・識別システムを導入

4. 革新的なアプローチ: フランス/テクノロジーとデータを活用、関連データをインターモーダリティ推進に活用

5. 法改正:
ポルトガル/自転車通勤者の労働条件に関連する法律の改善
スロバキア/道路プロジェクトにおける自転車専用道路の設計義務を導入

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ケーススタディ ー 各都市の自転車事情

1. コペンハーゲン、デンマーク: サイクリング革命をリード

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コペンハーゲンは、インフラへの投資に注力し、サステナブルな交通機関へ転換した「サイクリストの街」として広く知られています。市内には390kmを超える自転車専用道路が網の目のように整備され、安全性と利便性を確保しています。自転車の速度を感知し、できる限り赤信号を回避させる自転車にやさしい信号機(スマート信号機)や、日本でも企画展が開催される(※)など世界的に著名なアーティストオラファー・エリアソン氏がデザインした、自転車と歩行者専用の橋「サークルブリッジ(2015年)」などの革新的な橋の数々などもこの街のサイクリング文化に貢献しています。
コペンハーゲンの取り組みはこのようなインフラ整備だけにとどまらず、啓発キャンペーン、電動自転車への補助金、さらには学校での交通教育プログラムまで含まれています。
自転車を優先することで、コペンハーゲンはサステナブルな都市モビリティの世界標準を打ち立てています。

2. アムステルダム、オランダ: サステナビリティの道を独走

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オランダの人々の自転車への愛着は、都市計画に深く根付いています。 オランダの平坦な地形と整備された自転車のインフラが相まって、市民は主な交通手段に自転車を選ぶようになりました。1960年に始まり、世界初と言われる自転車のシェアリングサービス「 White Bicycle Plan」は交通事情を改善すべく、毎年20,000台の自転車を購入し、市民が自由に使えるようにするというしくみでした。このようなシェアリングサービスのほか、電動自転車の導入や補助金でのサポートにも積極的に取り組んでいます。他にもアムステルダム市の取り組みは、市内中心部の自動車通行禁止区域などの政策イニシアチブにまで及び、自転車は単なる交通手段ではなく、アムステルダムにおけるライフスタイルの一部となっています。

3. フライブルク、ドイツ: サステナブルな都市計画モデル

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フライブルクのサステナブルな交通手段の取り組みは、その包括的な都市計画に見てとれます。自動車乗り入れ禁止区域、広範囲にわたる自転車専用道路、接続のよいトラム網を通じて歩行者と自転車利用者を優先しています。 フライブルクは、電気自動車とハイブリッド車に重点を置き、環境に優しい交通機関を推進する先駆者でもあります。 市の交通政策はより広範囲の環境目標と一致しており、住民のニーズと環境保全のバランスをとった統合的でサステナブルな都市開発のモデルとなっています。

4. バルセロナ、スペイン: スーパーブロックと持続可能な空間

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バルセロナは、「スーパーブロック」という革新的なコンセプトを採用しています。「スーパーブロック」とは、自動車の交通を制限し、歩行者に優しいゾーン、広範囲のエリアです。 この取り組みは排気ガスによる空気汚染と騒音を削減し、サステナブルかつアクティブな交通手段の促進を目的としています。その他にも自転車レーンの拡大や自転車シェアリング プログラムの拡充も推進しています。効率的な地下鉄システムやバスを含む公共交通ネットワークは自転車の取り組みを補完し、低炭素の移動手段として、さまざまな選択肢を提供しています。 このように住みやすい都市の創造に力をいれているバルセロナは、環境の持続可能性と生活の質の両方を追及しています。

結論

ヨーロッパ諸国は、都市のケーススタディと組み合わせた「欧州マスタープラン (the Pan-European Master Plan for Cycling Promotion.)」を通じてサステナブルな移動手段の推進に一丸となって取り組んでおり、その報告書も提供しています。 この報告書は、成功例と改善点を明らかにすることで、自転車を交通環境の要にしようと努力している政策立案者、活動家、都市計画者にとって重要なツールとして役立ちます。 『2030 年までに自転車利用を 2 倍にする』という野心的な目標にヨーロッパ各国が取り組んでいる中で、これらの戦略とケーススタディは、より環境に優しく、より健康的で、よりサステナブルな地域コミュニティを創る希望の光となっています。

ヨーロッパにおけるサステナブルなモビリティへの旅は自転車を中心に、革命へのペダルを漕ぎ始めています。

元記事は こちら

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