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知る、つながる、はじまる。

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やりたいことが見つからないのは、むしろ''自然''? 多様な大人や企業との交流が、学生の新たな一歩を後押しする

    

from VOICE

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関西大学では、学生向けのアントレプレナーシップ(起業家精神)醸成プログラムを提供する

大学に入学すると、自分の好きな授業を選んだりアルバイトを始めたりと、それ以前の高校生活とは違って、自分で選択する機会が多くなる。しかし、いざ自由に好きなことを選ぼうとすると「自分は何がしたいんだろう?」と立ち止まってしまうことは少なくない。そんな多くの大学生が抱える悩みを、関西大学梅田キャンパス事務局の鍛島宗範さんと、イノベーション創生センターセンター長の石川正司教授にぶつけてみた。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

林正二さんさん

鍛島 宗範さん

国家資格キャリアコンサルタント。関西大学の職員としてキャリア教育に10年以上携わり、2,000名以上のキャリア支援を行う。現在は、答えのない問いに対して挑戦できる人材育成を行うことを目的にして、行動、体験、内省を繰り返すHACK-Academyを立ち上げ、PBL型プログラムや起業プログラムを企画、運営する。

林正二さんさん

石川 正司さん

関西大学化学生命工学部教授。2016年からイノベーション創生センター長を務める。自身も大学発ベンチャー「株式会社アイ・エレクトロライト」を設立。CEOとして現在に至る。

大学生活をかけて、これからの軸を見つけるために

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大学内外の様々な立場の人と意見を交わすことで、学生自身の興味の種や軸が見えてくる

「大学に入ったものの、自分が学びたいことややりたいことが分からないという学生は、非常に多いと思います。僕もこのVOICEと同じような相談をよく受けますが、その時は"それが自然な状態だと思うよ"と答えるようにしています。自分の興味のあることが明確な学生は"ラッキーだな"というくらいの心構えの方が、むしろちょうど良いのではないでしょうか」

こう話すのは、関西大学の梅田キャンパスで学生向けのアントレプレナーシップ(起業家精神)醸成プログラムの開発や運営に携わる鍛島さん。関西大学では13の学部で約3万人の学生が学んでおり、鍛島さんは主にキャリアサポートの観点から日々様々な学生と接している。

「学生のなかには強い意志を持って入学してくる子もいますが、多くの場合は周囲の環境に合わせて、ある程度決められたレールに沿って大学に入学してきます。ですから、入学後にいきなり"これからは自由なので、自分の好きにしてください"と言われても、何をしていいかがわからない。また、これまでの教育の影響もあって、周囲と違う行動をすることに慣れていないという傾向もあります。そこで僕たちが学生にできるのは、大学4年間を通じて色々なことにチャレンジしたり、失敗したり成功したりという経験を提供すること。その経験を積み重ねていくことで、自身の興味の種や自分の軸を見つけられるようになると思います」

学外での交流が、学生の新たな一歩につながる

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学生の興味を引き出す様々なプログラムや講座を提供する関西大学

関西大学では、学生が多様な考えや経験をもつ大人と交流することで、自身の興味を見つけ、その後の進路やキャリアについて考える機会を創出するために、アントレプレナーシップ醸成プログラム・HACK-Academy(ハックアカデミー)を運営している。プログラムは主に平日の夕方や夜、そして週末に無料で開催されており、関西大学以外の大学生も参加できる。

「このアカデミーでは、大学外の企業や自治体と共に行う体験重視のプログラムを学生に提供することで、学生が実現したいことを見つけ、主体的に生きるための力を養うことを目指しています。これまで30 社以上の企業や団体と連携し、企業が設定したテーマの課題解決や新規事業のアイデアづくりなどを行ってきました」

学生は大学生活の目標を考えるワークショップを通じて一歩を踏み出すきっかけを得たり、企業人や起業家から働くことの楽しさや難しさを直接聞けたりと、実践的な学びを得られる。1日型のワークショップから、事業アイデアを半年間かけて練り上げる起業プログラムまで、提供するメニューも様々だ。イベントを通じて自身の興味を見つけ、在学中から企業と共に新規事業に挑戦している学生もいるという。

「このプログラムは、起業すること自体を目的としているわけではありません。それよりも、大学の講義や研究室では会えない色々な大人と交流し、自分の考えをアウトプットする機会を得るなかで、自分のやりたいことを見つけ、結果的に大学内でのインプットにも興味を持つようになってほしいと考えています」

鍛島さんによると、自分のやりたいことや興味を問われた時に「フードロスに関心がある」「環境問題に取り組みたい」などと、社会的な課題を挙げなくてはいけないという固定観念を抱いている学生が少なくないそう。そこでHACK-Academyでは、より自由な視点で学生がそれぞれの興味を見つけられるように、プログラムのハードルを下げることを心がけている。

「社会課題などの"意識が高いもの"に興味を持たなくてはいけない、と捉われている学生が多いように感じています。そうではなく "思い切り運動できるサークルに入りたい""K-POPが好きだから韓国語を始めたい"というのも、学生の重要な興味の一つです。そうしたスタンスを私たちが日々伝え続けることで、学生が小さな一歩を踏み出しやすくなればと考えています」

人材育成にこそ、大学や社会の未来がある

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理工系の研究成果をテーマに、文系・理系の学生が事業化に向けたビジネスアイデアを競うコンテストを開催する

関西大学では他にも、大学内の知見と企業の開発力や事業力を組み合わせてイノベーションを生み出すことを目的として、2016年にイノベーション創出センターを設立。学内の研究成果を生かして事業を興す研究開発型の大学発スタートアップの創出を目指し、起業支援プログラムを実施している。また、人材育成の観点から、学生が自分の興味がある分野ややりたいことを見つけるきっかけとなるよう、若手起業家を招いた講演会を開催したり、新規事業などの取組みに積極的な企業を訪問する企業見学会などを行なっている。

同センターでセンター長を務める石川正司教授は、大学が人材育成に注力する重要性をこう強調する。

「私自身は蓄電池の研究に長く携わってきました。この分野において、日本はかつて世界のトップを走っていましたが、今となっては中国や韓国などが業界を牽引する存在になっています。こうした社会情勢からもわかるように、残念ながら日本の競争力は年々衰えてきている。大学としてこの現状を変えていくためには、自身の熱意や興味をもとにイノベーションを興し、行動する人材を育てることが最も重要だと考えています」

今、やりたいことや夢中になれるものがないことは、問題ではない。まずは自分の興味や関心を、焦らずに時間をかけて探っていくこと。そしてそれが見つかったら、周囲の様々な立場の人の知見や経験を借りながら行動を重ねることができれば、次第に自分の「好き」や「やりたい」が目に見える形に育っていくのだ。

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from VOICE(フロムボイス)

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「ワクワクするサステナブルを、ここから。」をキャッチコピーに掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。オウンドメディアとして、日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探していく「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。

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