たった0.5度でこんなに変わる! 温暖化が進んだ未来を想像し、今の私たちにできることを
記録的な大雨の発生や大型台風の到来など、全国各地で異常気象が観測されている。これまでに経験のないような暑さや寒さを体感して、不安を覚える人も少なくないはずだ。日本の気候はこれまでと比べてどのくらい変化しているのか。どうしたら気候変動を防ぐことができるのか。気象予報士の山田真実さんに伺った。
"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人
山田真実さん
放送局に就職し、主に夕方の報道番組や朝のラジオワイド番組を担当。その後交通事故による休職期間などを経て、2018年よりウェザーマップに所属。気象予報士として活動中。
たった0.5度の気温上昇がもたらす、日常への大きな変化
北海道での記録的な猛暑や西日本での記録的な大雨など、日本各地で異常気象が発生し、それに伴う被害が相次いでいる。だが、気象の変化を肌で「なんとなく」感じているものの、実際にどのくらい変化しているのかは、分からない部分も多いのではないだろうか。
気象予報士の山田真実さんによると、統計データの「平年値」を比べると、気象の変化が分かりやすくなる。平年値とは、特定の時期や地点の天候を評価する基準として利用されているデータのこと。気象庁は雨量や温度といった情報から30年分の平均を算出し、平年値を定めている。
「平年値は10年ごとに更新されていて、直近では2021年に最新版が発表されました。東京のデータをみると、10年前と比べて大きく差が出た3月や7月では、平均気温が約0.7度上昇している。人間の場合で考えてみても、平熱から0.7度体温が上がると体はかなりだるくなりますよね。地球にとっても気温の上昇は様々な変化を引き起こす原因になっていて、専門機関の研究によると、気温が0.5度上がると大雨や干ばつの発生が急激に増えると報告されています。ですから、0.7度の上昇というのは恐怖を感じる数字だと思うんです」
気温が上昇すると、異常気象が発生しやすくなるうえに、快適な気候の日が少なくなる。一般的に多くの日本人は18度〜21度の気温で、湿度は40%〜50%という5月ごろの気候を快適だと感じるというが、2021年はたったの2日しかなかった。
気温の上昇は私たちの身近な食生活にも影響を与えており、海水温が高くなったことで、魚が獲れる時期や量にも変化が生じている。「私は富山県の出身なのですが、2022年の1月は富山の名産である寒ブリの漁獲量が大幅に減り、出荷できた期間が過去最短になってしまいました。このまま気温が上がり続けると、日本の季節を表してきた旬の食材が食べられなくなる可能性もあります」
地球温暖化が進み続けた未来を想像する
気温上昇や気候の変化は、地球温暖化と密接に関わっている。地球は通常、太陽の光によってあたためられ、あたためられた地球から出る熱は宇宙に放出される。その際に、放出される熱の一部を吸収して地球から熱が逃げすぎないように調節しているのが、水蒸気やメタン、そして二酸化炭素などの温室効果ガスだ。人間の活動が活発になり温室効果ガスが増え過ぎた結果、宇宙に逃げるはずの熱が放出されずに地球の温暖化が進み、豪雨や台風が頻繁に発生するようになってしまった。
これ以上の温暖化を防ぐために、山田さんは一人ひとりが二酸化炭素の削減に向けて、化石燃料の使用を控えることが重要だと指摘する。化石燃料は、私たちの生活を多くの場面で支えている。例えば、様々な容器に用いられているプラスチックは、主に石油などの化石燃料が原料だ。また、ごみの処理には、収集過程から処分に至るまで、多くの化石燃料を使用している。
「化石燃料の使用を控えるために、マイボトルを持ち歩いたり、フードロスの削減を心がけたりと、それぞれができることから取り組まなくてはいけません。今後温暖化が進み雨の強さや頻度が変化すると、一部の地域では水不足が深刻な問題になります。近い将来、水圧の弱いシャワーを浴びたり、お手洗いの水が制限されてしまったりすることがありえる。そういう地球温暖化が進んだ未来の生活を想像してみると、嫌だなという気持ちから日々の行動が変わるのではないでしょうか」
強いコミュニティーを育むことが、命を守る行動につながる
山田さんは放送局の報道記者を経て気象予報士になり、現在は全国の気象情報をテレビやインターネットを通じて発信している。記者時代に北陸地方の気象取材に携わった際、情報の届け方に疑問を抱いたことが原点となった。
「豪雪取材の時に、情報の伝え方がざっくりとしていると、実際にどのくらい雪が積もるのかを視聴者に想像してもらうことが難しいなと感じました。北陸といえども山と平野では天候は全く違いますし、隣接している富山県と石川県でも雪の降り方も違う。もっと各地域に対して、わかりやすく細かな気象予報を届けたいなと思って。今は日々のニュースで気象情報を届ける際に、"何年ぶりの豪雪になりそうです"だけではなく、"〇〇年の豪雪と同じくらい雪が降る可能性があるため、こういう風に行動してください"とまで伝えるよう心がけています」
こうした地域ごとの詳細な気象予報は、台風や豪雨などの異常気象が発生した際にも大きな助けになる。山田さんは過去のデータを分析して行動につなげることが、被害を最小限に食い止められる方法だと考え、ハザードマップをもとに自宅や職場の危険度合いを確かめ、避難場所を事前に把握することを強く勧めている。
「ニュースでは最も危険な場合を想定して情報を発信したり、避難勧告を出したりしているので、視聴者からすると煽られたような印象を受けてしまうのではないかと、日々もどかしさを抱えています。想像していたよりも被害が大きくならずに、予報自体が空振りになることもある。ですが命を守ることが最優先ですので、避難して何も起こらなかった際に"なんだ、逃げなくてよかったのに"と残念がるのではなくて、"無事で良かった。避難訓練になったね"と思ってもらえたら嬉しいです。また、ニュースで避難勧告を見聞きするよりも、近所の人や家族といった身近な人から避難を促された方が、心が動く場合もありますよね。ですから、普段から地域の人や家族とコミュニケーションをとって、コミュニティーを強くしておくことが、命を守る行動につながるはずです」
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