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「プラスチックを使うのはそんなに悪いこと?」一点もののプラ工芸品から未来を描くプロダクトブランド

    

from VOICE

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buøy(ブイ)は海洋プラスチックごみから一点ものの商品を作り出す

街なかやメディアで「脱プラスチック」という言葉を頻繁に聞くようになり、プラスチックの削減や紙製品などへの代替が進んでいる。しかしそもそも、プラスチックを使うのは"よくないこと"なのだろうか。プラスチックメーカーの株式会社テクノラボで、海洋プラスチックごみから一点ものの商品を作り出す 「buøy(ブイ)」のブランドオーナー兼プロダクトデザイナーを務める田所沙弓さんに、プラスチック問題との向き合い方、解決方法を探るヒント伺った。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

佐久間 弘明さん

田所 沙弓さん

buøyブランドオーナー。2013年にプラスチックメーカーである株式会社テクノラボに入社。IoTデバイスや無線機器筐体のプロダクトデザインならびに会社の広報、web制作を担う。現在はbuøyのデザイナー兼ブランドオーナーとして、海洋ごみを材料とした製品の市場開拓、及び製品開発を行う。

プラスチックとの向き合い方を、今一度見直すために

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プラスチックを"悪"と捉えるのではなく、 "使い過ぎ"や"一度使ってすぐに捨てる"という現状に向き合うことが大事だと田所さんは想いを込める

「プラスチックというのは元々、みんなの生活を豊かにするために、という優しい想いから作られた素材だと思います。プラスチックを取り入れることで、私たちの生活は実際にとても便利に、そして豊かになっていきました。ですがその一方で、重大な環境被害をもたらしていることも事実です。この問題を根本から解決するためには、プラスチックを"悪いもの"と捉えて削減していくのではなく、プラスチックを"使い過ぎている"もしくは"一度使ってすぐに捨てている"という現状を改めて認識することが必要だと感じています」

こう指摘するのは、テクノラボの田所さん。安く大量に生産しやすいプラスチックは、これまで多くの場面で使用されてきたが、それゆえに最近は海洋プラスチックごみをはじめ、プラスチックのごみ問題が深刻化している。田所さんはそもそも、「使い捨て」を前提として開発されている商品が多いことを問題視し、プラスチックだけでなく、その他の素材や商品との向き合い方をも見直すべきだと強調する。

「今は環境負担の軽減やごみの削減に向けて、色々なところで脱プラスチックが叫ばれていますよね。ですが、仮にプラスチックから他の素材への置き換えが進んだとしても、製品をすぐに使い捨てることを前提としたものづくりを続けたり、大量生産・大量廃棄をし続ける限り、環境に悪影響が出ることに変わりはないと思うんです。そうではなくて、"使い捨てて良い"という考え方をやめ、物や製品に思い入れを持って長く使うという発想が求められているのではないでしょうか」

捨てられたプラスチックから、一点ものの製品を生み出す

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buøyは日本全国の海岸に流れ着いた海洋プラスチックごみを材料として様々なプロダクトを開発、販売する

こうした課題意識を持ったテクノラボは、世の中からプラスチックをなくすことを目指すのではなく、プラスチックをきっかけに物との向き合い方を問うために、2020年に新規事業としてプロダクトブランド「buøy」を設立。日本全国の海岸に流れ着いた海洋プラスチックごみを材料として、植木鉢や歯ブラシスタンド、キーホルダーなどを作り販売している。

「私たちはプラスチックがもつ高い耐久性や強度といった特徴を生かして、製品開発を行っています。今までは"替えが効くもの"や"使い捨ててよいもの"として扱われてきたプラスチックが、思い入れを持って大切にされるものになってほしいという願いを込めて、一点物の工芸品を作ってきました。デザイン面では、海洋ごみの色合いを生かしながら "この素材って海洋ごみなの?"という驚きを持って手に取ってもらえるようなプロダクトに仕上げることを心がけています」

buøyでは製品の原料である海洋プラスチックごみを、ビーチクリーン(海岸清掃)を行う全国の団体から買い取っている。集められた海洋プラスチックごみは福祉事業所などで洗浄、粉砕、パッキングされた後に自社工房に送られ、デザイナーやスタッフが製品化を進める。buøyを展開するテクノラボは、本業がプラスチックメーカーであるため、まとまった量の海洋プラスチックごみをリサイクルする技術やプロセスが確立されている。

「ビーチクリーンに取り組んでいる皆さんには、海岸で拾ったごみが一点ものの製品に生まれ変わるという循環を感じてもらうことで、少しでも活動の励みになればと考えています。また、海洋ごみは全国に溢れているので、日本各地が産地になりえるという面白さもあります。今は神奈川にある自社工房のみで製品開発を行っていますが、今後は各地に生産拠点を設けて、その地に流れ着いたプラスチックごみならではの色味や特徴を生かした製作ができたら嬉しいですね」

個人の選択が、企業や社会を変える

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海洋ごみを用いた事業が拡大すると、将来的には"海洋ごみ市場"が築かれる可能性も

全国で販路を拡大し、さまざまなアイテムを販売しているbuøyだが、製品開発の初期段階では課題も多かったと田所さんは振り返る。一口にプラスチックと言っても、アクリルやポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)といった多様な素材や種類が存在し、それぞれの用途や耐熱温度も異なる。海洋ごみや生活ごみには、これらの素材が混在しているため、原材料としてリサイクルするのは一般的に難しいとされている。

「一度社員みんなでビーチクリーンを行った際には、プロの目から見ても"リサイクルは到底できないだろう"と言えるほど色々な海洋プラスチックごみが海岸に散乱していて、唖然としました。ですがそこから時間をかけて研究を重ね、素材の種類や異物などが混ざった状態で製品を作り上げるという、これまでとは全く異なる方法で技術を開発できたことで、製品化に成功しました」

buøyでは今後、自社の事例をきっかけに他社でも海洋ごみを用いた事業が行われ、企業間で海洋ごみの取引が行われたり、ゆくゆくは"海洋ごみ市場"が築かれていくような将来像を描いている。

最後に田所さんから、プラスチックや身の回りの商品と日々向き合う際に大切にしたい心構えとして、私たち生活者に向けたメッセージをいただいた。

「私は、生活者の皆さんの選択は社会を変えるためにとても重要だと考えています。と言うのは、商品の使い手である生活者が、大量に消費したり、一度使ったらすぐに捨てるということをしなくなれば、企業も商品のあり方や生産方法を見直さざるをえなくなるからです。今は多くの企業がコストの兼ね合いなどからプラスチックを選び、製品に用いていますが、私たち生活者側の考えと選択が変われば、企業の行動も変わっていくと思います」

一度だけ使用されてすぐにごみになってしまうものは、身の回りのプラスチック容器や包装以外にも、色々なアイテムが思い浮かぶ。私たち一人ひとりが「使い捨て」という前提に疑問を持ち、使い捨てのものをできるだけ使わない、もしくは繰り返し長く使えるものを選ぶことは、企業や社会を変え、地球環境を守る足がかりになるに違いない。

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from VOICE(フロムボイス)

三菱電機イベントスクエア METoA Ginza
「from VOICE」

「ワクワクするサステナブルを、ここから。」をキャッチコピーに掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。オウンドメディアとして、日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探していく「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。

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