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自分らしさは、自分では決められない。「らしく生きる」人を増やすために届けたいメッセージ

    

from VOICE

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TIEWA代表の合田さんは、個人が自分らしさを選択できるかどうかは、その個人だけで決められることではないと語る

メディアやSNSで「らしさ」という言葉を以前よりもよく見かけるようになり、ジェンダー平等やDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の推進といった観点から、「自分らしさ」を尊重する機運の高まりを感じるようになった。しかし、いざ自分自身を見つめてみると、何が自分らしさなのかがわからないと感じることは少なくないだろう。企業向けのDE&I研修などを手掛ける株式会社TIEWA(タイワ)の合田文代表に、自分らしさを見つけ、表現するために求められていることについて、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza 「from VOICE」編集部が話を伺った。

"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人

合田 文さん

合田 文さん

株式会社TIEWAの設立者として「ジェンダー平等の実現」などの社会課題をテーマとした事業を行う。共通点でつながる男性同士向けマッチングアプリ「AMBIRD」を運営。広告制作からワークショップまで、クリエイティブの力で社会課題と企業課題の交差点になるようなコンサルティングを行う傍ら、LGBTQ+やフェミニズムについてマンガでわかるメディア「パレットーク」編集長をつとめる。2020年にForbes 30 UNDER 30 JAPAN、2021年にForbes 30 UNDER 30 ASIA 選出

"らしく"生きるためには、社会が変わる必要がある

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合田さんは、自分らしさを見つけ、それを出せるか出せないかは、コミュニティや社会がそれを実現できる環境を用意しているかどうかにかかっていると指摘する

「誰にでも本来、自分にとって心地良いものや好きなもの、つまりは"その人らしさ"につながるものはあると思います。ですが、もし自分がそれを選んだら"普段仲良くしているあの人はどう思うかな?""家族はどう考えるかな?"と、周りの目が気になって選択しにくいこともあるはずです。私は、自分らしさについて考える時、重要なのは自分の方ではなく、むしろ所属しているコミュニティや企業、つまりは社会の方にあるのではないかと考えています」

こう話してくれたのは、TIEWAで代表を務める合田さん。合田さんは、個人が自分らしさを選択できるかどうかは、その個人だけで決められることではないと続ける。

「自分らしさを見つけ、それを出せるか出せないかは、コミュニティや社会がそれを実現できる環境を用意しているかどうかにかかっていると思います。一例として、女子校出身者とよく話す内容があります。それは、女子校という環境で育った生徒は、従来の"女性らしさ"を求められにくい環境で生活を送ることで、自分の個性をより発揮しやすい傾向があるのでは、ということです」

それでは学校や就職先、所属している組織やコミュニティなど、自分が今いる環境で自分らしさを見つけにくい、もしくは出しにくいと感じた場合はどうしたら良いのだろうか。

「まずは決して自分を責めないでください。そして、年齢やジェンダー、肩書に捉われることなく、自分にとってより心地いい選択肢を選びやすい環境にいるかどうかを、少しひいた視点から考えることが重要だと思います。もし、周りの目やプレッシャーが理由で自分を出しにくいと感じたら、別の環境を探したり、その場に実際に身を置いてみる。さまざまな理由から難しい方もいると思うのですが、もしそれができれば "らしく"生きるための選択肢がひらけてくるかもしれません」

DE&Iについて考えることは新たなビジネスマナーに

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TIEWAでは企業向けにジェンダーやDE&Iをテーマにした研修を手掛ける

では私たちが暮らす日本社会は、自分らしさを出しやすい環境と言えるだろうか。現状を見てみると、ジェンダーギャップ指数は先進国の中で最低レベルであったり、主要7カ国(G7)のうち同性婚が認められていない国は日本だけであったりと、決してそうとは言いにくい。TIEWAではこうした現状を変えていくために、企業向けにジェンダーやDE&Iをテーマにした研修を行うほか、SNSで情報を発信している。

「ジェンダー平等やDE&Iの重要性は理解され始めていますが、それでも足りない部分は多いと思います。研修を行っていると、性のあり方については誰にとっても関係があるトピックであるということや、自分の持つ特権性を自覚して行動することの大切さについて、まだまだこれから伝えていかなくてはいけないと感じています」

TIEWAはこれまで50以上の企業や自治体、大学などで研修を実施。日常で感じたジェンダーバイアスを書き出すワークや、無意識の偏見を自覚するワークショップなどを通じて、どのような企業や社会であれば周りの人が"らしく"生きやすいのか、今よりも組織やチームを強くしてイノベーションを起こすためには何が必要なのかを、各企業や自治体が抱える課題に合わせて時間をかけて議論している。

「セクシュアリティの名前や意味を詳しく勉強するよりも、"自分の周りの人がその人らしく過ごせるように、無意識の偏見や特権性について考えたうえで、自分の立場であればこういうことができるかもしれない"と、自分の言葉で話せる人を増やすことを大切にしています」

とは言え、社会や組織で長く根付いてきた考え方や"当たり前"を変えるのは、容易ではない。そこで合田さんは、ジェンダー平等やDE&Iの理解の促進に取り組むことで、組織力の強化や業績向上につながるといったデータや数字によるメリットも提示しながら、意識の変容を促している。

「前提としては"人権や尊厳が守られていない人が近くにいるかもしれないからこそ、組織はその課題に向き合う必要がある"ということをお伝えします。ですがそれが個人にとってだけでなく、組織にとっても良い方向につながる可能性がある。DE&Iについて話すと"新しいことを取り入れる必要があって、難しそう"と捉えられがちです。しかしきっと多くの企業が、これまでも時代に合わせて新しいシステムや制度を導入してきた歴史を持っている。DE&Iについても"なぜやるのか"に納得感を持って重要性を理解していただければ、新しいビジネスマナーとして組織のものにしていただけるのでは、と思っています」

身近なモヤモヤから社会の問題を考える

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パレットークでは、ジェンダーやセクシュアリティについて実体験に基づくマンガやイラストを発信する

TIEWAではこうした企業向け研修以外に、漫画メディア「パレットーク」をTwitterやInstagramなどのSNS上で運営している。「男性が育休を取ることは、いまだに異例と思われている気がする」「クリスマスに恋人がいないことを可哀想と決めつけられてしまった」など、ジェンダーやDE&Iについてモヤモヤした身近なことから、その課題の背景や専門知識などをわかりやすく説明し、一人ひとりの行動につながるメッセージを発信しているのが特徴だ。読者層は24歳以下が最も多く、総フォロワー数は約14万人にのぼる。

「"今自分が抱えているモヤモヤは、実は社会の構造が理由で起きたことなのかもしれない。だとしたらどんなアクションができるだろう?"という方向に視点を向けられるような漫画を心がけています。"同性愛者であることを揶揄されるのは自分が悪いんだ"とか"性別が理由で減点されても合格できるくらい勉強を頑張ればよかったんだ"と、自分ばかり責めてしまうような考え方を手放せる人が増えればと思っています」

今後はより安心して情報発信や議論ができる場を設けるために、Webサイト上でのメディア運営に向けた準備を進めている。運営費をクラウドファンディグで募った際は、全国から応援の声が届いた。

「たくさんのコメントやご支援をいただいたなかでも"パレットークを読んで自分がクィア(性的マイノリティ)であることを初めて誇りに思えました"という声を頂戴した時は、すごく嬉しかったです。まだまだ社会にはたくさんの"こうあるべき"が存在していて、疑われていない当たり前があります。あなたはそのままで素晴らしいというメッセージを地道に発信することで、"らしく"生きたい人のための選択肢を照らし、それを尊重する社会につながればと思っています」

一見すると、自分らしさを見つけるためには自身の内面を深掘りし、どのように表現するかを考えることが重要に思える。しかし、自分らしさは自身の周りのコミュニティや環境に大きく影響を受けるもの。だからこそ、社会側の意識や制度を変えていく必要があると考えることができれば、自らが望む社会をつくるために行動したくなるはずだ。

元記事はこちら

from VOICE(フロムボイス)

三菱電機イベントスクエア METoA Ginza
「from VOICE」

「ワクワクするサステナブルを、ここから。」を掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探すメディア「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。皆さまのVOICEも、こちらにお寄せください。

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