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生ゴミのリサイクル率90%超!? 韓国から学ぶ食品ロス対策

韓国から学ぶ食品ロスTOP画像

年末年始は、家族や同僚、友人と集まり、食事やお酒を楽しむ機会が多かったのではないでしょうか。家での集まりでついつい食事を作りすぎてしまったり、お店で頼み過ぎてしまったり......。食事を余らせてしまい「もったいない......」という経験をした方も少なくないはずです。

そこで本記事では、「食品ロス」について考えてみたいと思います。世界中でさまざまな取り組みが行われていますが、今回はお隣の国、韓国に注目。皆さんは、韓国が食品ロス削減の分野で先進的な取り組みを行っており、世界的に注目されていることを知っていますか?

韓国の風景

制度が変える国民の意識

韓国は、政府主導の法整備から市民レベルでの意識改革、そして効率的なリサイクルシステムの構築まで、多岐にわたる食品廃棄物削減の分野で成功を収めています。特に、「政府主導で極めて短期間に全国規模でフードバンクの体系を構築するという、他国にみられない特異な経緯をたどった例」として知られています(引用元:消費者庁)。

韓国が食品廃棄物削減を推進するうえで重要な転機となったのが、2005年に施行された「生ごみ直接埋立禁止法」です。この法律は、その名の通り生ごみの埋め立て処理を全面的に禁止するものでした。それにより、食品廃棄物のリサイクルが急速に進み、現在ではそのリサイクル率が90%を超えるまでに至っています。これは、法制度による規制が環境保全においていかに大きな影響を持つかを示していると言えるでしょう(参照元:環境省)。

生ごみ問題に対する初期の取り組みの一つが、韓国政府が1990年代後半から導入した家庭ごみの有料化でした。それが2010年の食品廃棄物の従量課金制度の導入に繋がりました。これは、食品廃棄物の排出量に応じて料金が課される仕組みです。家庭や飲食店で発生する生ごみの量を可視化することで、市民や事業者が自主的に廃棄物削減に取り組むよう促しています。このような経済的インセンティブを活用した政策は、効率的で持続可能なリサイクルを実現するうえで非常に効果的でした(参照元:消費者庁)。

生ごみは有料の黄色い専用袋を使って出すことが義務付けられており、集まった生ごみはバイオガス、飼料、または肥料にリサイクルされます。一部の自治体では、集合住宅に自動化された食品廃棄物収集装置を導入しており、住民は袋を使わずにカードをスワイプして、その場で重量に基づく料金を支払うことができます(参照元:The Guradian)。こういったIoT技術を活用して廃棄物の量や質をデータとして収集することで、リサイクル効率のさらなる向上が実現しました。

韓国の食文化では、小皿に入った副菜が多く出され、食べ残しが出る傾向があり、そうした残り物は長年にわたりすべて地中に埋められていました。また、韓国料理に定番の煮込みは水分が多く、悪臭がひどくなる傾向があります。そのため埋め立て地には悪臭が広がり、周辺の住民が苦情を申し立てたことが制度が変革するうえで政治的支援になったそうです。(参照元:朝日新聞GLOBE+

食品廃棄物削減と社会福祉の両立

韓国料理

また、2006年には「食品寄附活性化法」が施行されました。この法律では、食品を寄附した企業や個人が税制優遇を受けられる仕組みが整備され、さらに寄附食品が原因で事故が発生した際の免責規定も設けられました。これにより、企業や団体が安心してフードバンク活動に参加できる環境が整い、食品廃棄物削減と社会福祉が両立する仕組みが築かれました。これには、アジア通貨危機による社会的弱者の保護対策として、フードバンクを提唱したという背景があります。教育人的資源部(現 教育部)も、給食制度としてフードバンク活動に積極的に関わっており、社会福祉施策として保健福祉部と共同提案が進められました。また、韓国のフードバンク活動は民間の「食べ物分かち合い運動」として始まった背景もあ ることから、行政業務の一部を「業務委託」するものではなく、あくまで民間と行政が共に行う「協力事業」であると考えられています(参照元:消費者庁)。

韓国の先進的な取り組みを、"国民性"だけで説明することはできません。各国の寄附文化の定着度合いを示す指標の一つとして、挙げられるWorld Giving Index(見知らぬ人への支援、金銭の寄附、時間の寄附<ボランティア労働>の同意スコアから求められる指標)を見ると、2022年の韓国における寄附行動の順位は88位であり、欧米諸国に比べても低いことがわかります。WGIを基に、 「韓国ではアメリカのような自発的に寄付する文化が十分になかった」と評価されています(引用元:消費者庁)。つまり韓国のフードバンク活動が今日広く展開されている背景に、文化面の特殊要因は認められず、政策的な介入によってフードバンクを普及させることが可能だと示唆する事例となりました。

最後に

では、日本は韓国から何を学べるのでしょうか。まず第一に、法制度の整備と段階的な導入が挙げられます。韓国では、1990年代後半から家庭ごみの有料化が進められ、2010年代には生ごみのリサイクル義務化や従量課金制が導入されました。こうした一貫した取り組みが、国民の意識改革の土台となり、現在の成功を支えています。

しかし、生ごみのリサイクル率は世界でもトップレベルの韓国ですが、生ごみそのものの発生量は増加の一途をたどっているのが現状だそうです。これらの政策は、リサイクル率の向上には大きく貢献しましたが、ゴミの総量削減には必ずしも結びついていないようです。韓国の事例は、リサイクルの推進だけでなく、ゴミの発生抑制にも同時に取り組む必要性を示唆しています。

とはいえ、日本が韓国のリサイクル政策から学ぶことはたくさんあるのではないでしょうか。韓国の成功例を参考に、食品廃棄物削減に向けた取り組みを急速に進めることで、日本も持続可能な未来への一歩を踏み出すことが期待されています。

元記事はこちら

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