お酢や醤油も量り売り!? 無理なく楽しむ「ゼロ・ウェイスト」のススメ
![小売店・斗々屋(ととや)では、全ての商品をパッケージなしで販売。生産から販売、消費まで一貫して環境や経済に配慮している。](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured_01/606/606_001.jpg)
飲食店のテイクアウトに限らず、スーパーやコンビニで販売されている商品のほとんどは、プラスチックや紙で包装されている。それらのなかには「過剰」と感じる包装も少なくない。包装をできるだけ減らしたり、なくすことはできないのだろうか。全ての商品をパッケージなしで販売する小売店・斗々屋(ととや)のノイハウス萌菜さんに、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza 「from VOICE」編集部が話を伺った。
"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人
![ノイハウス 萌菜さん](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured_01/606/606_00P.jpg)
ノイハウス 萌菜さん
サスティナビリティ・コンサルタント。使い捨てを考え直すことを発信する「のーぷら No Plastic Japan」主宰。ゼロ・ウェイストショップ「斗々屋」の広報、J-WAVEでラジオパーソナリティを務める。
小売業における、過剰包装と食品ロスの課題
![ノイハウスさんは、食品の長い流通経路や現状の小売店の商習慣では、ロスが出やすいと指摘する。](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured_01/606/606_002.jpg)
「たしかにスーパーなどの小売店では、ほとんどの商品をプラスチックで包装して販売しています。それはもちろん、食材が傷むのを防いだり衛生を保ったりというメリットがあるからですが、便利さを追求するあまり、過剰包装になっていることはかなり多いですよね。包装容器や資材は一度使うとそのままごみになってしまうケースがほとんどで、環境に負荷を与えてしまうのは大きな問題だと思います」
こう話すのは、食品や生活雑貨を量り売りで販売する専門店・斗々屋で広報を担当するノイハウス萌菜さん。ノイハウスさんによると、特に食品の場合は、消費者の手に届くまでに生産者や集荷業者、卸業者や小売店といった多くの関係者が介在しているため、一貫してパッケージなしで商品を流通させることは難しいという。
さらに、こうした長い流通経路や現状の小売店の商習慣では、食品ロスが出やすいという別の問題も。
「現状の食品のサプライチェーンでは、賞味期限の3分の1を経過した商品は納品しない"3分の1ルール"があります。そしてスーパーに商品が陳列されたとしても、賞味期限が近づいたり売れ残ったりした商品は廃棄されていて、膨大な食品ロスが発生している。もちろん最近では、こうした問題への関心が高まっていますが、まだまだ各事業者の取り組みがつながっておらず、業界全体としてアプローチできていないのが現状です。ですから私たちとしては、過剰包装を削減するだけでなく、食品ロスといったその他の課題も含めて解決するために、業界の慣習や仕組みを変えていく必要があると考えています」
本当に必要な分だけを購入するために
![斗々屋本店・京都店では、野菜や果物、調味料や冷凍食品など700品目ほどをパッケージなしで販売する。](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured_01/606/606_003.jpg)
こうした課題の解決に向けて、斗々屋は生産から販売、消費までを通して環境や経済に配慮したサステナブルな商品を量り売りで、そしてパッケージなしで販売する専門店を運営している。
「斗々屋本店・京都店では、野菜や果物、調味料や冷凍食品など700品目ほどをパッケージなしで販売していて、その多くは直接生産者から仕入れています」
量り売りの場合は、客は持参した容器や貸出用の容器に好みの商品を必要な分だけ入れ、計測器で重さを量り会計を行う。野菜と果物用の計測器には、商品をかざすだけで種類や重さを自動で見分けるAIが搭載されているものもあり、店員に声をかけたり、自ら計算をする必要はない。
「一般的に量り売りというと、購入に時間がかかるイメージを持たれる方が多いので、なるべく手間を減らせるよう努力しています。とはいえ、通常のスーパーよりも買い物全体に時間がかかるのは事実です。ですが私たちは、商品を購入して消費するという行為は、商品を選んで会計をしたら終わりではなく、包装容器などのごみを分別して捨てるところまでがセットだと考えていて。こう捉えると、量り売り商品の購入時に多少時間がかかったとしても、ごみを洗ったり分別したりする時間が不要になるため、手間や時間かからない買い物というのは考え方次第だと感じています」
量り売りには、包装を削減できるだけでなく、必要な物を必要な分だけ購入することで食品ロスを削減できる利点もある。更に斗々屋では、鮮度が落ちる前に食品を加工し、惣菜の販売やレストラン営業を行うほか、2023年からは賞味期限切れの商品の販売も開始した。
「賞味期限はあくまでも"おいしい目安"として考えた方が適切で、この期間までに食べないといけないとされている消費期限ではありません。今回の私たちのチャレンジを通じて、皆さんに"賞味期限が切れたものでも問題なく食べられるものがある"ということを知っていただきたいですし、小売店やメーカーの方々が現状の"当たり前"を疑い、食品ロスを減らす取り組みについて考えるきっかけになればと考えています」
ノイハウスさんは、商品の過剰包装やごみの削減をより一層進めるためには、消費者に生活習慣を変えようというメッセージを発信するだけではなく、企業側が環境に配慮した選択肢を増やすことが大事だと強調。斗々屋でも、従来の小売店のあり方を変えるべく、様々な企業やメーカーと議論を進めているほか、企業や個人に向けて斗々屋の量り売りのノウハウを伝える講座なども実施している。
大事なのは、"やりたい"というポジティブな気持ち
![ノイハウスさんはこれまでの経験から、サステナブルな行動に関して、無理なく楽しみながら取り組むことが継続するために最も重要だと語る。](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured_01/606/606_004.jpg)
斗々屋はもともと、オーガニック食品専門の卸売業者として2005年に開業。その後、現在のような量り売りの専門店を新たにオープンした。
「当初はオーガニック食品の卸売業として、環境に配慮して生産された商品を販売しているにもかかわらず、環境に負担をかけてしまうプラスチックなどで小分けして包んでから販売する行為に矛盾を感じたことが、一つのきっかけとなりました。そこでパッケージなしの商品を直接消費者向けにも展開したいと考え、2019年に東京、そして2021年に京都でごみを出さない買い物ができるお店をオープンしました」
これまで斗々屋の広報として、そして一個人としてもサステナブルな行動を広める活動を続けてきたノイハウスさん。最後に、一人ひとりが環境や社会、そして地球に配慮した選択肢を選び、行動するためのヒントとなる考え方について教えてくれた。
「私は日常にあるプラスチックやごみを削減していきたいと思い、これまでに自ら団体を立ち上げたり斗々屋に参画したりと、身近にできることから行動していきました。とはいえ当初は、サステナブルな選択肢を一貫して選ぶことができていない自分に戸惑い、責めてしまうこともあって。ただ、活動を通じて色々な人と話すなかで感じたのは、無理なく楽しみながら取り組むことが継続するために最も重要だということ。何事も"やらなくてはいけない"という気持ちになってしまうと、長続きしません。大事なのは"やりたい"という自発的な想いを無理なく追求していくことだと思います」
目標に向かって活動や取り組みを継続するなかで、時に矛盾が生じると、誰でも迷いや不安を感じるもの。そんな時こそ、その気持ちを押し隠さず、仲間と意見を交換したりして、肩の力を少し抜いてみてみよう。そうすることで、目の前の"当たり前"を違う角度から眺めることができ、次の行動のヒントが見えてくるはずだ。
元記事はこちら
![from VOICE(フロムボイス)](https://s.yimg.jp/images/csr/sdgs/img/archive/featured/454/454_00P.jpg)
三菱電機イベントスクエア METoA Ginza
「from VOICE」
「ワクワクするサステナブルを、ここから。」を掲げ、三菱電機社員が社会の皆さまと共に学び、共に考えながら、その先にある"ワクワクする"社会を創るべく活動しています。日常にある身近な疑問"VOICE"から次なる時代のチャンスを探すメディア「from VOICE」を企画・運営しています。最新情報はインスタグラムで配信中です。皆さまのVOICEも、こちらにお寄せください。