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世界陸上から甲子園まで...スポーツが迎えた「ターニングポイント」 研究者に聞く、気候変動とスポーツのこれから

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「甲子園での二部制の導入」「世界陸上での猛暑対策」といったニュースから「暑すぎて部活の練習ができない」「外で走るのは危険だと言われた」といったような身近な出来事まで。2025年、スポーツや運動の場面において、これまでとは違う"変化"を感じた方も多いのではないでしょうか。

気候変動は、気温はもちろんのこと、雨、雪、さらに海や砂浜にも影響しており、競技の運営や安全、そして「スポーツのあり方」そのものに影響し始めています。

今回は、私たちの生活にとって身近な「暑さとスポーツ」をテーマに、気候変動によるスポーツへの影響を研究されている国立環境研究所の大山 剛弘研究員にお話を伺いました。

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国立環境研究所 大山 剛弘研究員

この記事の目次

  1. スポーツの現場に迫る気候変動の影響、迎えたターニングポイント
  2. スポーツができなくなるかも?問われるスポーツのあり方
  3. 「当たり前」の実践と、それを支える仕組みづくり
  4. 変わっていく世界を快適に生きぬく選択「適応アクション」

スポーツの現場に迫る気候変動の影響、迎えたターニングポイント

猛暑や短時間の激しい雨などの影響でスポーツを取り巻く環境はより厳しいものになってきています。
例えば、2024年には熱中症による死亡者数が初めて2,000人を超え、2025年には熱中症による救急搬送者数が初めて10万人を超えました。

その一方で、2025年はターニングポイントとなるような前向きな変化が多く見られました。法律の改正や、甲子園のルール変更について大山 剛弘研究員に伺いました。

「昨年は『スポーツ基本法』の中に、初めて気候変動や厳しい気候条件を考慮する必要性が盛り込まれました。スポーツに関わる法律の中で、気候という要素を正式に位置づけたことは画期的だったと考えています。
また、夏の甲子園で二部制が導入されたことも、象徴的な出来事でした。これまで『そうした方がいいよね』と言われ続けてきたことが、実際に形になった瞬間でした。夏の甲子園という日本の学生スポーツを象徴する一つの大会で、伝統にとらわれない安全を重視した運営方法が取り入れられた影響は大きく、今後、ほかの競技にも波及していく可能性が高いと感じています」

記録的な猛暑とその被害の大きさを背景に、暑さはもはや「災害」として捉えるべきものだという認識が、スポーツの現場をはじめ社会全体で共有されつつあります。

気候変動の影響が避けられない今、リスクを理解したうえで、いかに安全に運動を続けていくかが問われています。

スポーツができなくなるかも?問われるスポーツのあり方

社会的な対策が進む一方で、競技の継続そのものが危ぶまれるケースも出てきています。

「スポーツは非常に多様なため、影響の現れ方はさまざまですが、高温、豪雨、少雪といった気候要因が、すでに幅広い形でスポーツに影響を与え始めています。
例えば温暖化に伴う積雪の減少によって、ウィンタースポーツが年々行いにくくなっていると言われています。実際、ウィンタースポーツの競技団体の間でも、『気候のことを前提に行動していかなければならない』という意識が広がってきています。
加えて、海面上昇や海洋環境の変化も無視できない影響を及ぼしています。例えば、砂浜でのスポーツやレジャー、ダイビングなどのマリンスポーツでは、砂浜の減少やサンゴの白化といった現象が活動の可否や質に直結します」

また日本ではとても身近な「部活動」に大きな影響を及ぼす可能性があると、大山研究員は話します。

「日本の部活動では、小中高を合わせると何百万人が、年間を通じて継続的にスポーツを行っています。定常的な運動には健康面で多くのメリットがあることがこれまでの研究でも明らかになっており、日本には、そのための一つの「仕組み」があるとも言えます。
しかし、近年の猛暑を受けて、学校活動の中で熱中症予防のために活動を中止することが増えてきました。プロスポーツであれば、専属トレーナーがつき、体温を測りながら限界を見極めてトレーニングすることも可能ですが、部活動ではそうした対応が難しく、一律の基準で管理せざるを得ない場合が多いです。結果として、運動の機会が損なわれた、思うように運動ができていない、と感じている方も多いのではないでしょうか」

「子どもの頃に運動する習慣があると、大人になってからも体を動かす生活が続きやすいことが報告されています。部活動などの機会が失われると、その後、何十年にもわたって運動習慣が根付かず、健康に悪影響が出る可能性があります。
また、部活動は運動だけでなく、人間関係やコミュニティ形成を学ぶ場としての役割も大きく、こうした社会的側面が失われることによる影響も懸念されます」

「当たり前」の実践と、それを支える仕組みづくり

そのような中で、私たちはどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。スポーツの現場で大切なことは、難しい知識よりも基本の徹底だと、大山研究員は話します。

「まず、個人の対策の基本は、当たり前を当たり前にやることです。テレビやインターネットで暑さ指数(WBGT)を確認する、こまめに水分補給をする、体調がおかしいと感じたら早めに休憩などの行動に移すことが挙げられます。
真夏だけでなく、体が暑さに慣れていない5~6月、また激しい運動をする場合、厚いユニフォームを着る場合にも、警戒することが重要です」

また、個人の対策に加えて、環境と仕組みを作りあげていくことも重要です。

「熱中症対策については、多くの省庁や競技団体が既に分かりやすいガイドラインを整備しています。『この暑さなら活動を中止する』『冷却を取り入れる』といった判断は、特別な知識がなくても行うことができます。『今まで、これぐらいの練習で休憩はしていなかったから...』といった前例にとらわれない意識が重要です。
大切なのは、生徒や先生、指導者だけでなく、保護者や地域社会全体が、スポーツの重要性を認識して、役割を分担しながら、安全に無理なく続けられる環境と仕組みを整えていくことだと思います」

甲子園に象徴されるように、これまでのやり方にとらわれずに、スポーツをより安心・安全に行えるようにするための取り組みが少しずつ浸透してきています。一人ひとりがこのような積み重ねに加わっていくことで、スポーツ、また私たちの健康を持続可能なものにしていくのではないでしょうか。

変わっていく世界を快適に生きぬく選択「適応アクション」

大山研究員のお話にもあったように、暑さが当たり前となる中で、気候変動による影響やリスクは、日常のあらゆる場所に潜んでいます。そうした中で私たちが選べるのが、気候変動の影響に備え、快適に暮らしていくための「適応」という選択肢です。

例えばスポーツにおいては「運動前、休憩時、運動後などに手足や首、脇などを冷やす」などのクーリングや、「天気予報を見て暑さ指数を確認し、それに応じた判断をする」「スポーツをする時刻を変える」「冷房設備のある体育館など、スポーツをする場所を変える」といった環境自体を変える行動も、暑さの中で安全にスポーツを楽しむための大切な適応アクションです。

元記事はこちら

「#適応しよう」ページでは、こうした「様々な適応」を含め、これからの時代を快適に暮らすための「15の適応アクション」を紹介しています。 未来を快適に暮らすために必要なのは、特別な誰かの大きな決断だけではありません。
あなたが今日選ぶ、ほんの小さな「適応」の積み重ねが大切です。
まずは今日の暑さ対策から、自分らしいアクションを選んでみませんか?

スポーツ・レジャーの適応 | 適応しよう

気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)

気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)

2018年気候変動適応法に基づき国立環境研究所内に設立された、日本・アジア太平洋地域の気候変動影響調査と適応策研究の中核機関。
国内外影響情報を収集・整理・分析し、適応情報プラットフォーム「A-PLAT」で研究成果や学習・普及啓発ツールを提供。
自治体への技術的助言や企業への情報提供を行い、気候変動適応に関する取組に貢献します。

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