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どんなミライ、次世代に渡す?#豊かな未来を創る人

    

サストモ編集部

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2022年9月に1周年を迎えたYahoo! JAPAN SDGsでは、「#豊かな未来を創る人」と題して、未来を創るために活動する9名の個人に焦点を当てた特集記事を公開しました。「豊かな未来のきっかけを届ける」と掲げて様々なテーマを取材する中で、今回はなぜ「人」にフォーカスしたのでしょうか。編集長の長谷川琢也(ヤフー株式会社)が、今回の特集にかける思いや見どころについて話します。

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Yahoo! JAPAN SDGs編集長 長谷川琢也(はせがわ・たくや)

1977年3月11日生まれ。自分の誕生日に東日本大震災が起こり、思うところあってヤフー石巻復興ベースをつくり、宮城県石巻市に移り住む。石巻で出会った漁師や魚屋と、漁業を「カッコよくて、稼げて、革新的」な新3K産業に変えるための漁業集団フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げる。現在は持続可能な地域や社会をつくるため、「地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」や、SDGsに特化したWebメディア「Yahoo! JAPAN SDGs」編集長を担当。

受け継ぐために大事なのは「ことの始まり」

── これまで「活動」を起点に様々な方にインタビューしてきましたが、なぜ今回は「人」に焦点を当てる特集を組んだのでしょうか。

今回ご紹介した9名は、今の現状を変えて、未来に向けた新しいものを作ろうとしている人たちです。普段の記事でも、未来のために活動する人に話を聞いているので、そういう意味ではあまり変わらないかもしれません。

ただ、普段はやっている「こと」が先にきて、活動内容やその背景にある社会の構造を聞いていますが、今回はその活動を初めた個人的な背景やルーツ、つまり「ことの始まり」を掘り下げて聞いています。

具体的な未来を創るのは、会社や組織、活動や事業かもしれませんが、それは結局、人の集団です。人から人にバトンが手渡しされていくことで未来がつながっていきますし、その人の活動のきっかけを知ることが、バトンを受け渡すきっかけになると思うんです。だから、あらためて「人」というのは、メディアとして大切にしたいテーマだと感じています。

今回の特集では、みなさん自身のルーツや「ことの始まり」を大いに語ってくれました。その人がなぜこの活動を大切にしているかを読者の方に届けることで、一人でも未来のバトンを受け取ってくれる人が増えたらと考えています。

区切りがないボーダーレスな社会の実現

── 9名様々な方がいますが、未来という視点では、今回の最年少は19歳の井手上漠さんでした。話を伺っていかがでしたか。

井手上さんは、自分たちが未来を渡したい人、未来そのものの世代の方ですよね。ど真ん中の人にインタビューを受けてもらった感覚です。

個人的には、井手上さんと話してから、性別など区別につながるような質問や表現はしないようにと、強く意識するようになりました。例えば「お姉さん」「お兄さん」という言葉を使うのも気を遣います。最初は意識的にそうしていましたが、今ではだいぶ慣れてきて、自然にできるようになってきました。

性別なんて、どっちでもいいじゃないですか。その人そのものを見ればいいというか。男性でも女性でもなく「『私は漠です』と答えるのが自分にとっては自然です」と言っていたのが本当に素晴らしいことだと思います。多様な一人ひとりの人がいる。それでいいじゃないかという気がしています。

井手上さん自身、これまで葛藤して、苦しんで、そこから開放された今、いろんな人を巻き込んでその価値観をどんどん広げようとしていて。それを全身で表現しているというか、生き方で示しているのがすごく素敵だと思いました。

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井手上 漠(いでがみ・ばく)

2003年1月20日、島根県隠岐郡海士町に男性として生まれる。2018年、高校1年生で第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにてDDセルフプロデュース賞を受賞。以降、『行列のできる法律相談所』やサカナクションのミュージックビデオ『モス』等、数多くのメディアに出演するほか、モデルとして多数のファッション誌・美容誌で活躍する。
Instagram @baaaakuuuu Twitter @baaaakuuuu
「あなたのままでいい」白黒の人生を変えた「理解」ではなく「認める」こと

── 「自分の存在に色がついてないと、人生は、白黒で生きてる気がしない」という話も印象的でしたね。

ジェンダーの話は、つまるところ基本的人権の話だと考えています。ひょっとすると、今の世界では人生を白黒に感じていて、生きていていいのかと悩んでいる人がたくさんいる。ジェンダーレスとか、ボーダーレスにするのは、人権を尊重する上での最低レベルとして、やらなければならないことだと思います。

── 区別しない、個人そのものを見ることが大切である一方で、人はカテゴライズやラベリングをしがちです。どう折り合いを付けたらいいのでしょうか。

たしかに、仕事の上でも、カテゴライズやラベリングで整理をすることで、検索性が高くなったり、管理しやすくなりますよね。それがデータベースを整理するということです。

ただ、人に対してはしなくてもいいと思うんですよね。自分も仕事で商品のラベリングをしていたからよく理解できますが、商品をカテゴライズするのですら限界があります。人に対してはなおさらです。無理やり人をカテゴライズする必要はないんです。

トイレや更衣室など、現実的に区別をしなければならない場所はあるのかもしれませんが、例えば個室にしたら解決しますよね。最近だと、化粧品売り場がジェンダーレスになっているのを見て、とてもいいなと思いました。あらためて、ジェンダーレス、ボーダーレスという考え方は大事だと。

── 井手上さんは「闘うのではなく笑っている姿を見せたい」と言っていて、境界をつくるのではなく、いろんな人と協力していることが魅力的でしたね。その点は、鈴木香里武さんの「いろんな人と協力して実現したいことを進める」というスタンスは、近いものがあったかもしれません。

鈴木さんは、見た目も活動も尖っていて面白かったですけど、海のことをやるために「あえて海以外の専門性を身につけた」という話が特に印象的でした。小さい頃から魚が好きだったけど、その専門ではなく心理学の専門を身につけて「海×◯◯」をしようと思ったという話から、一般の人に届けようとする意志を感じました。

それに、自分ひとりでは実現できないから、人に頼ると決めて動いていたのもすごいですよね。それを16歳の頃からやっているのは驚きました。

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鈴木香里武(すずき・かりぶ)

1992年3月3日生まれ、うお座。幼少期から魚に親しみ、専門家との交流などを通して魚の知識を蓄える。大学では心理学を学び、観賞魚の印象や癒やし効果を研究。現在は北里大学大学院で稚魚の生活史を研究する。荒俣宏氏が立ち上げた海好きコミュニティ「海あそび塾」の塾長。2022年7月、幼魚水族館の館長に就任。近著は『カリブ先生のおさかな赤ちゃん珍図鑑』(エムピージェー)。株式会社カリブ・コラボレーション代表取締役。男物のセーラー服がユニフォーム。

本業は壮大な金魚すくい!? 「楽しい」から続けてきた、人と魚をつなぐきっかけ作り

── 「いきなり大きな活動に参加する必要は決してなくて、足元で自分ができること、しかも楽しみながらできること、それを僕は提案していきたいなと考えています」という話も良かったですね。

そうなんですよ。SDGsという大きな言葉で捉えるんじゃなくて、身近なものとして問題を感じるというか。都会化した日本でも漁港の下を覗いたらそこには海があって、環境や海の課題がすぐそこにあるという話はすごくいいですよね。

今は、自分自身と環境が分断されすぎていると感じます。以前、養老孟司さんが「昔は「環境」という言葉がなかった」と仰っていました。つまり、環境は自分の生活の一部であり、自分の外側に存在するという捉え方ではなかった。それが、環境という言葉ができたことで、自分と違う存在だと認識するようになってしまったと。

岸壁から海を覗くことで、自然と自分を近づけていきたいという話はすごく印象的でした。

── 壁を壊すという視点では、バブリーさんの「ギャル式ブレスト」の話は強烈でしたね。「ギャルマインド」を企業で働く人に注入することで、社内の見えない壁を壊すという取り組みをされています。

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バブリー

CGOドットコム総長。1996年生まれ、山梨県出身。高校2年生のときに中退。大阪に家出をしてギャルカルチャーと出合う。その後、立教大学コミュニティ福祉学部に入学。在学中の2020年に「ギャルマインドで世の中をアゲにする」ことを目指して、CGO(チーフギャルオフィサー)ドットコムを立ち上げる。主力事業である「ギャル式ブレスト」は、これまで30社以上の企業や団体への導入実績を持つ。バブリーの由来は、本名である竹野理香子の「バンブー(竹)」と理香子の「リ」から。本人曰く「生活は質素」

自分を主語にして生きる。ギャルマインドでイノベーションが起きるアゲな社会を

世の中の閉塞感とか、今まで「あたりまえ」と思われていたこと、凝り固まった何かをぶち壊す手法として「ギャル」という手段を取ったのがすごく面白かったです。なんというか、忖度させない、忖度しない未来の作り方ってこういうことなんじゃないかと。

自分の中での印象ですが、ギャルって「無敵感」があるんですよね。若気の至りみたいにも見えるけど、人の目を気にせずに、そのときの感情に素直でいられて。その感じがみんな羨ましいのかなって思います。だから、バブリーさんの研修を受けると、自分の中にある「ギャルマインド」を探してみようかなという気になるのかもしれません。

── 「ギャルマインド」という言葉を使ったのは発明だと思いましたね。自分の中で本当にやりたいことを見つけましょう、と言われると、少しだけ説教されているような感覚もありますが、自分の中のギャルを見つけようと言われると、楽しくなる。上の世代に対して下の世代からアプローチしているのも珍しいと感じました。

一般的には、上の世代の人が若い世代の人にキャリア教育をしたりしますからね。下から上を突き上げる取り組みをしている、という点でも面白い活動ですよね。戦うとかではなくて、一緒に楽しみながらやっていく感じが素敵でした。

ルールができると行動も変わる

── 今回は9名の中で、3名の国会議員と3名の町長もご紹介しています。こういった特集で、政治家を取材するのは珍しい気もしますが、どういった思いがあったのですか。

現場での取り組みはものすごく大事ですが、それだけでは世の中変わらない。政治も一緒になって変えていく必要があるということは、前身のメディア「Gyoppy!」で、豊洲市場のマグロ仲買人・生田よしかつさんを取材したときに教えてもらったことです。

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「世の中は政治が動かしてる」マグロの絶滅を防ぐため、消費者にできることはない!?

現場で30年近く漁業の持続可能性について訴え続けた中で、響かない人もいた。だけど、政治が動いて法律・ルールが変わることで、多くの人の行動が変わったと。政治だけが全てだとは思いませんが、現場だけではなく、政治も含めて社会を変えていく必要があると感じています。

── 長谷川さん自身のこれまでの活動でも、政治や法改正の可能性を感じることはありましたか。

自分が関わっている漁業の領域では、最近だとブルーカーボンはまさにそうだと思います。数年前からカーボンニュートラルのために何かやらなければならないとみんな感じつつも、実際に動く企業には限りがありました。それが、法改正されると、大きな企業も取り組むようになり、予算がついて経済効果も生まれます。ブル--カーボン・クレジットの取引量は、昨年は50トンくらいでしたが、今年は3000トン近くまで増えています。「決まったことだからやらなきゃ」みたいな感覚も実は大事なんです。

だから、自分たちの未来を託すという意味で、政治や選挙ってすごく大切なんだと思います。でも、自分もそうでしたが、選挙に行って、紙に丸つけて箱に入れるだけで「未来を託している」と言われても実感が湧きません。今回の特集では、政治家の人間性やルーツが身近に伝わればいいと思って、取材を決めました。

── 実際、政治家のみなさんも、未来に何を残したいか、等身大の言葉で語ってくれましたね。

個人的には、政治家への印象がだいぶ変わりましたね。未来を担うとか、未来を創ることに対して「あなたと私で一緒に未来を創りましょう」と言ってもらえたような感覚でした。

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なぜ町長に?地域の未来をつくる3人の挑戦

── 3名の町長も、いろんな人と一緒に町の未来を創っているとお話されていましたね。

それぞれの場所で、それぞれが思いを持って立ち上がっているのが素敵でした。各地域、強みも特色も違うので、それぞれのスタイルの違いを知れるのも面白かったですね。桑原悠さんが4年間で町立病院の経営改善をした話や、菅野大志さんが国の経験をいかして地方創生を進めている話など、周囲の巻き込み方で学べることも多かったです。

都会の人からすると、地方自治体の長は遠い存在かもしれませんが、そういう人にこそ日本の地域のことを知ってほしいですね。よく考えると、食べ物やエネルギーなど、都会を支えているのは各地域なんですよね。だから、各地域が豊かになったり、良い事例が生まれたりすることってすごく大事ですし、それが日本全体を豊かにすることにつながる。そういう視点で見てもらえたらと思います。

個人的には、森田浩司さんの「自分のまちをダサいまちにしたくない」という言葉は強く残っています。飲み屋で文句を言ってるだけでは変わらないからというところがスタートで、町長になったのがすごかったです。

どんなバトンを未来に渡したいか?

── 国会議員の3名も地域の代表という意識が強いということが、今回お話を聞いて印象的でしたね。

みなさん、立ち上がりのきっかけは地元への思いでしたね。個人的には、東日本大震災から東北で10年活動してきた身として、福島出身で当時高校生だった馬場雄基さんが、大人になって帰ってきて、震災復興に対して取り組んでいることが手放しで嬉しかったです。「逃げるんですね」という後輩からの言葉を背負って、逃げないで未来に向き合う姿勢。震災当時を知っている世代が、知らない次の世代に変な形で問題を残すわけにはいかないという覚悟で取り組んでいることは、今回の特集の中心のテーマだと思います。

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未来にバトンを渡す。国民の代表3人が描く社会

── 次世代にどんな形で社会を残すのか。受け渡すのか。持続可能な社会というものを考えると、まさに世代を引き継ぐこと、次の世代にどうやってバトンを渡すかが問われると感じます。

次の人が受け取りやすい形でバトンを渡すことが大事なんだと思います。もしかしたら、自分がバトンを受け取ったときは、すごいトゲトゲだったり、ドロドロだったり、場合によっては刃物をむき出しにされているような状態かもしれない。それを自分の世代で、研いで、研ぎ続けて、次の世代に渡すというか。寺田静さんも、自分の世代で責任を持ってやるところまでやって、ちゃんと「よろしく」と言える状態で渡そうとしているという話に心を動かされました。

── 国光文乃さんは、そのために若い人と話しながら政策を考えたいと話していましたね。特定の人としか話していないと、政策にもバイアスがかかると。

こういう時代だからこそ、人口の多い高齢者だけでなく、多くの人とコミュニケーションをとって、偏りのない未来をちゃんと作っていきたいと話していましたね。その姿勢はすごく伝わったし、個人的にはカラフルな社会にしたいという言葉も印象的でした。

SDGsって、日本では環境の側面で語られることが多いですが、もう一つの側面、多様性や人権の話は欠けがちです。女性の働き方なども含めて、日本社会は多様性に欠けているから、それぞれが輝けるカラフルな社会にしたいという言葉には感動しました。

大人世代に受け取ってほしい

── 最後に、どんな方にこの特集を届けたいですか。

次世代を担う若い人たちはもちろん、自分と同世代・40代の人たちにも見てほしいですね。

同年代の人たちは、ロスジェネ世代とか、失われた世代と言われたりすることもありますが、仕事では責任のある立場にもなってきて、充実している世代でもあります。自分自身、次の世代に「諦められる大人」にはなりたくないし、先輩としていい顔もしていたい。「上の世代は聞く耳がない」と思われている現状を変えなければならないと感じています。

未来とテーマで掲げていますが、自分たち含めた上の世代が変わっていければ、未来に託さなくても良い社会になっていくじゃないですか。

私は、東日本大震災を期に東北と関わるようになって、少しずつ未来とか次世代というものを意識するようになりました。それは、昔から上司にIT業界は40歳くらいで世代交代するくらいの気持ちで仕事をしようと言われていたからかもしれませんが、未来の人たちの方が、創造性を発揮していいものを創ってくれると信じているからでもあります。

今回、未来を創るために活動している9人の話を聞きました。それまで、頭ではわかっていたようなもの、わかっているつもりだったもの、わかったふりをしたかったものに対して、ど真ん中で活動する当事者から話を聞いたことで、未来に何かを渡そうとしている人は、覚悟を決めて真剣に活動していることをあらためて痛感しました。

こういう人たちが活動していることを、自分たちは受け止めなければならない。ボケッとしていたり、文句を言ってるだけではダメ。本気で受け取る。知った上で、ちゃんと受け取る。それが、自分たち世代の責任だと思います。

そして、まずは自分たちができることをやる。その上で、次の世代に少しでもいい未来を渡していきたいです。

  • 島田龍男

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サストモは、未来に関心を持つすべての人へ、サステナビリティに関するニュースやアイデアを届けるプロジェクトです。メディア、ビジネス、テクノロジーなどを通じて、だれかの声を社会の力に変えていきます。

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