地方こそ電気自動車がおすすめ? Hondaの「N-ONE e:」は、デザインもサイズも走りもちょうどよかった
Hondaの新型軽乗用EV「N-ONE e:(エヌワン イー)」が、2025年9月に発売されました。国産の軽EVの中ではダントツの航続距離(※1)を誇るそうですが、デザインや実際の乗り心地は? 青森・八戸在住のライターが、実際に乗ってみた感想をレポートします。
切っても切れない、地方とクルマの関係性
地方では切り離すことができない、クルマとの暮らし。環境省が2022年度に行ったCO2排出実態統計調査によると、世帯当たりの自動車用燃料による年間のCO2排出量は、地方別に見て関東甲信と近畿エリアが少なく、筆者の住む東北や、北陸エリアが多いようです。
また、資源エネルギー庁が2025年7月に発表したデータによると、全国の給油所数が2024年度末時点で、前年度と比べて405か所も減って、27,009拠点になったそうです。一方のEV充電スタンド数は、2025年10月時点のゼンリン調べで36,643拠点となり、ガソリンスタンド数を上回っています。
八戸ではまだ感じることはありませんが、さらに人口の少ない土地では、身近なガソリンスタンドが減っていく不安の声を聞くこともあります。
そんななか、日に日に募るのが電気自動車(EV)への憧れ。環境にやさしいのはもちろん、近年はデザインや燃費のいいEVが増えてきています。でも、地方でEVを持つ不安はいろいろ。どれくらいの距離を走れるの? 充電はどうする? などなど。
わが家は一家で1台の自動車を所有しているのですが、普段は夫が仕事で使っているので、気軽に出かけられないのが最近の悩み。もう1台あったらどんなに便利だろう、しかも環境に配慮したEVなら最高なのに......!
ただ、わが家は敷地内に駐車場がなく、近隣に借りている状態。そうなると充電のハードルが高そう⁉︎ 実際のところどうなのか、体験させてもらいました。
Hondaの新型軽乗用EV「N-ONE e:」とは?
さっそく、試乗させてもらうEVとご対面。
Honda初の軽自動車として1967年に発売された「N360」の後継モデルである「N-ONE」をベースにしたEVです。強い張りを持たせた曲面なので、レトロっぽさがありつつ新しさが感じられるデザイン。毎日乗っても見飽きることがなさそうです。
クルマの顔になるフロントグリルには、ラメのような粒子状の模様が。これは廃棄されたHonda車のバンパーを回収・洗浄・粉砕した「バンパーリサイクル材」なんだとか。Hondaの歴史がぎゅぎゅっと詰まった、サステナブルな素材です。
お次は内装を見ていきましょう。
外観からはコンパクトな印象を受けましたが、運転席は十分な広さが。運転席と助手席にはシートヒーターがついていて、2段階の温度調節が可能だそう。寒い季節に嬉しい機能です。
インパネ上部のベージュ色のラインには、温室効果ガスの削減にも貢献できる植物由来のバイオ樹脂を使用。また、フロアカーペットにはリサイクルペットボトルを再資源化した素材を使用していたりと、そこかしこに地球環境への配慮が伺えました。
バッテリーはフロア下に搭載しているそうなのですが、薄型化することで、車内は大人4人が乗っても快適に過ごせる広さです。
見れば見るほど、デザインの細部までこだわりを感じます。うーん、早く運転してみたい!
初めてのEV体験。地元をドライブしてみた
筆者は今回が初めてのEV体験です。東京に住んでいた頃は交通インフラが整っていたので、10年以上のペーパードライバーを経て、Uターンしてから5年かけて運転技術を向上させてきた身。緊張する〜!
いざ、POWERボタンを押します。
.........静か〜〜〜!!!
自家用車はガソリン車なのでブォンとエンジン音が出ますが、「N-ONE e:」は、パッと電気がつくようなイメージ。
走り出しもスーーーッと静かで、スムーズな加速ができました。
走り出して感じたのは、ハンドルが軽くて扱いやすいので、運転が楽しい! バッテリーを床下に配置した低重心設計だそうで、安定感のある走行ができました。フロントフード(ボンネット)が視界を邪魔することなく、運転席からの視界も良好です。
スマートフォンと Bluetoothで接続すると、スマホのアプリをカーナビ画面に映し出すことができます。音楽を聴きながらのドライブはテンションが上がる〜!
せっかくなので、走行時のサポート機能も試してみることに。「N-ONE e:」は、Hondaの軽乗用車として初めて、シングルペダルコントロールを採用しています。これはアクセルペダルの操作だけで加速・減速、完全停車までできるというもの。
初めての体験なので慣れるまでは不思議な感覚でしたが、ブレーキとアクセルのペダルの踏みかえをしなくてもいいので、慣れてしまえばとっても快適でした。
さて、ドライブを満喫していたらちょうどお昼どきになったので、地元の飲食店へ行くことにしました。
目指すは、左奥に見える「海席料理処 小舟渡」。車1台がやっと通れるような細い道なので最初は不安でしたが、車体がコンパクトで小回りがきくので、心配無用でした。
帰りは坂道でしたが、EVならではのパワーでスイスイ進んでくれました。
今回は試す機会がなかったのですが、「N-ONE e:」は、先進の安全運転支援機能(※2)である「Honda SENSING」を標準装備しているほか、Hondaの軽自動車としては初めて(※3)、「トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)」を搭載しているそう。
また、衝突事故での二次被害軽減を支援する「衝突後ブレーキシステム」を採用するなど、Hondaの技術力が詰まっています。まだ運転に苦手意識がある筆者のような人間にとっては、ありがたい機能ばかり......!
収納は? 充電は? 気になるポイントをさらにチェック
さて、自宅に戻って、さらに気になるポイントをチェックしていきます。軽自動車はあまり荷物が乗らないのかな......と勝手にイメージしていたのですが、「N-ONE e:」の収納力やいかに?
後部座席を倒して荷室とフラットにしたら、大きな収納ボックスも問題なく積めました。これならたくさん買い物したときにも安心ですね。
ちなみに「N-ONE e:」ではさまざまなシートアレンジが可能で、後部座席の座面を上げてスペースを作ることも。
見ての通り、高さのある荷物でもしっかり載せられました。コンパクトだけどたっぷり収納ができるのは嬉しいポイントですね。
そしてEVといえば、災害時の非常用電源としても優秀なイメージがあります。「N-ONE e:」が搭載する駆動用バッテリーは29.6kWh。定置型の蓄電池で10kWh前後、ポータブル電源は容量の大きいものでも3kWhくらいなので、EVのバッテリー容量は心強いです。
もちろん災害時だけでなく、日常使いもバッチリ。スマホの充電はもちろん、駐車場などでちょっとした待ち時間にパソコンを充電しながら作業もできてしまいます。
しかも「N-ONE e:」のすごいところは、車内だけではなく、車外への給電も可能なこと!
Honda純正アクセサリーのAC外部給電器「Honda Power Supply Connector(ホンダパワーサプライコネクター)」を使うと、最大1,500Wまで出力できます。
この外部給電を利用して、電動ノコギリでDIYに挑戦してみました。家の中でDIYするときは養生しないと家の中が木屑まみれになるのですが、その手間が省けて最高に便利でした。
自宅に充電設備を設置する場合、電気料金の安価な夜間に充電しておき、日中はV2H機器(※4)で家庭に電気を使用することで、電気代を節約することもできます。家庭での充電は、普通充電(6kW)を使用して約4.5時間(※5)で充電ができるそう。
わが家では駐車場の位置もあり充電設備の設置が難しそうなので、近所にあった急速充電スポットで充電体験してみることにしました。最近はショッピングモールやコンビニ、ホテルなどの駐車場にEV用の充電器をよく見かけるようになりましたね。
インパネの表示が変わって、充電が始まりました! 感動!
ガソリン車のように給油のために電源を切る必要もないので、待っている間はアイドリングを気にせず、パソコン作業などをしてもいいかもしれません。夏場の給油は車内で待っていると熱中症になるのでは?と心配になるくらい暑くなりますが、エアコンを切る必要がないので、快適に待てるのも嬉しいです。
地方でのEV、とってもアリ!
都道府県別のEV普及率に関するデータを見ると、上位には岐阜や愛知、岡山などがランクイン。都市部だけでなく、地方でもEVは実際に増えているようです。
地方では都市部に比べて一軒家が多く、充電器を設置しやすいですし、マンションやアパートでも近くの充電スポットを使えば問題なさそう。これからの地方暮らしにはEVのほうが合っているのかもしれません。
個人的に、EVに関する一番の懸念は雪道の走行でした。しかし調べてみると、冬の急斜面を運転するわけでなければ問題ないようです。
というのも「N-ONE e:」はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)で、エンジンも駆動輪もフロント部分にある2WD車。青森のような雪国だと4WD車が必須だと思い込んでいたのですが、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の実験結果によると、勾配9%の緩やかな坂道であれば問題なく上りきることができ、勾配20%の急勾配の坂道では上り切れなかったそう。
筆者が住んでいるのは平坦な道に囲まれたエリアなので、日常使いなら全然アリ! 俄然、「N-ONE e:」をセカンドカーとして迎えたい気持ちになりました。
なにより丸1日乗ってみて、デザイン性の高さやコンパクトなサイズ感、快適な走りに、すっかり愛着が湧いてしまいました。海へ山へと、思い立ったときにさっと行けるのも最高です。Hondaさん、このまま八戸に置いていってもらえませんか......?
Honda N-ONE e: 製品情報
メーカー希望小売価格(消費税込み): e: L 319万8800円 / e: G 269万9400円
一充電走行距離※1(WLTCモード※2・国土交通省審査値): 295km
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取材長谷川琢也
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取材・執筆栗本千尋
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