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「食品ロス」と「フードロス」は違う?その理由をSDGsとFAOの定義から読みとく

井出留美(Yahoo!ニュース 個人)

Trendy ugly organic carrot and potato(写真:CavanImages/イメージマート)

食品ロスのことを指して「フードロス」と呼ぶ人を目にする。だが、食品ロスを管轄する省庁(農林水産省や環境省、消費者庁、内閣府、経済産業省、文部科学省)は、みな「フードロス」ではなく「食品ロス」という用語を使っている。法律名も「フードロス」ではなく、「食品ロス削減推進法」と「食品ロス」を使っている。

では、「食品ロス」と「フードロス」はどう違うのだろうか。

「フードロス(Food Loss)」とはフードサプライチェーンの前半で発生する食品の量や質の低下

国連食糧農業機関(FAO)が発表しているSOFA(The State of Food and Agriculture, 2019)(1)を見ると、次のように書いてある。

フードロス(Food Loss)とは、小売業者、食品サービス事業者、消費者を除く連鎖の中で、食品供給者の判断や行動によって生じる食品の量や質の低下のことである(SOFA, 2019)。

食料が農地で栽培・収穫されてから運ばれ、製造・加工、卸、流通、小売を通って消費者までたどりつく、その一連の流れを、鎖(くさり)にたとえて「フードサプライチェーン」と呼ぶ。そのフードサプライチェーンの前半で発生するものを「フードロス」と呼ぶ、と書いてある。下の図でいうと、赤いワクで囲ってあるところだ。収穫後、輸送、製造・加工・包装の工程までを指す。

フードサプライチェーンにおけるフードロスインデックス(SOFA, 2019より)

「フードウェイスト(Food Waste)」とはフードサプライチェーンの後半で発生する食品の量や質の低下

同じくFAOのSOFA, 2019(1)を見ると、次のように書いてある。

フードウェイスト(Food Waste)とは、小売業者、食品サービス事業者、消費者の判断や行動によって生じる食品の量や質の低下を指す(SOFA, 2019)。

つまり、フードサプライチェーンの後半、小売や食品サービス事業者(外食など)、消費者の家庭で発生するものを指す。前半と違って、消費者が入手し得る工程だ。先に示したイラストの後半部、緑色の部分が該当する。

フードサプライチェーンにおけるフードロスインデックス(SOFA, 2019より)

日本では2つを合わせて「食品ロス」

日本では、「まだ食べられるにもかかわらず、なんらかの理由で廃棄される食品」のことを指して「食品ロス」と呼んでいる。食品ロスを管轄する省庁のうち、農林水産省の説明をみてみると、事業系と家庭系に大きく分けている(2)。したがって、FAOの定義の「フードロス(Food Loss)」と「フードウェイスト(Food Waste)」を足したものといえる。

FAOの定義より筆者が作成した「食品ロス」の説明。イラストの上部が「フードロス」下部が「フードウェイスト」

SDGs12.3ではフードサプライチェーンの前半で発生するものを「フードロス」後半を「フードウェイスト」

SDGs(エスディージーズ)の12番、ターゲット12.3では、次のように書いてある(3)。

2030年までに、小売店および消費者レベルでの一人当たりの世界のフードウェイスト(Food Waste)を半減させ、ポストハーベストロスを含む生産・サプライチェーン上のフードロス(Food Loss)を削減する。
Target 12.3

By 2030, halve per capita global food waste at the retail and consumer levels and reduce food losses along production and supply chains, including post-harvest losses.

SDGsの12.3で「半減(halve)」と数値目標が決められているところは、フードサプライチェーンの後半、消費者が入手し得る部分だ。前半の「フードロス」に関しては、よく読むと「削減する(reduce)」とは書いてあるが、半減とは書いていない。

英語では「ロス=損失」「ウェイスト=廃棄(無駄)」

FAOは、「ロス」は「損失(失われた)」食料、「ウェイスト」は「廃棄された(無駄にされた)」食料、というふうに意味を使い分けている。

指標12.3.1 - 世界のフードロスとフードウェイスト

SDGs目標12.3には、損失と廃棄という2つの要素があり、2つの別々の指標で測定されるべきである。

サブ指標12.3.1.a - フードロス指数

フードロス指数(FLI)は、生産から小売レベルまで(それを含まない)に発生する食品ロスに焦点を当てている。FLIは、主要10品目のバスケットについて、基準期間と比較した損失率の変化を国別に測定する。FLIは、SDGターゲット12.3に向けた進捗状況の測定に貢献する。

サブ指標12.3.1.b - フードウェイスト指数

小売レベルと消費レベルで構成されるフードウェイストの測定に関する提案が開発中である。このサブ指標については、国連環境計画が主導している。

FAOの農業・食品エコノミストであるStjepan Tanic(ステファン・タニック)氏は、「フードロス(損失)」と「フードウェイスト(無駄)」の違いについて、「フードサプライチェーンから外れた時期(タイミング)によって決まる」と述べている(4)。

想像してみてください。私たちが口にするものはすべて、農場から食卓までの複雑なフードサプライチェーンを通って運ばれます。FAOの調査によると、人間が消費するために生産される食料の3分の1が、実際には食卓に上がらないという驚くべき結果が出ています。食べられなくなった食品を「失われた」と分類するか「無駄になった」と分類するかは、フードサプライチェーンから外れた時期(タイミング)によって決まります。

食品ロス削減を目指すフードテックスタートアップ「One Third」も定義を説明

オランダのフードテックスタートアップ「One Third(ワン・サード)」(5)は、コールドチェーン(産地から消費地まで低温・冷蔵・冷凍など、一定温度で流通させる物流のこと)の物流を改善し、データに基づいて生鮮食品の賞味期限(おいしく食べられる期限)を専門的に予測し、食品ロスを防ぐ組織だ。彼らの公式サイトにあるイラストは「フードロス(Food Loss)」と「フードウェイスト(Food Waste)」を単純化していてわかりやすい(6)。

フードロスとフードウェイストの違い(One Third公式サイトより)

文章ではこんなふうに説明している。

フードロスとは、小売業者、食品サービス事業者、消費者を除く連鎖の中で、食品供給者の判断や行動によって生じる食品の量や質の低下のことである(SOFA, 2019)。

農場と最終販売を行う事業者の間で発生する廃棄食品は、フードロスとみなされる。通常、システム上の問題が原因となる。

フードロスを防ぐためには、コールドチェーンマネジメントや賞味期限の予測などの解決策が存在する。この問題を解決するにはオペレーションの改善が鍵となる。

フードウェイストとは、小売業者、食品サービス事業者、消費者の判断や行動によって生じる食品の量や質の低下を指す(SOFA,2019)。

レストラン、スーパーマーケット、または消費者の家庭で食品廃棄が発生すると、それはフードウェイストとみなされる。

用語の違いは、フードウェイスト(食品廃棄物)が教育によって解決しやすいことが多いことに起因する。フードロスの削減には、物流の改善が必要だ。

筆者は日本語では「食品ロス」英語では「FLW(Food Loss and Waste)」

以上、食品ロスとフードロスの違いをFAOの定義やSDGsから見てきた。筆者は日本語では「食品ロス」、英語では「FLW(Food Loss and Waste)」を使うようにしている。

「食品ロス」は何を指すのか、という定義に関しては、これに特化している研究者もいらっしゃるので、定義の専門家ではない筆者が詳しく解説することはできない。が、少なくとも「フードロス」という言い回しだと、フードサプライチェーンで発生するロスのうち、一部しか指さないので、英語圏の方や専門家が使っている言葉とは定義のずれが生じる可能性がある、ということはお伝えしておきたい。

参考情報

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