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豊かな未来のきっかけを届ける

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''みんなの当たり前を増やす''ための女性活躍促進。これからの企業制度・施策の考え方

Yahoo! JAPAN SDGs編集部

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3月8日は、「国際女性デー(International Women's Day)」。

ニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源となり、国連によって1975年に3月8日に定められた、女性の社会参加と地位向上を訴える記念日です。

男女格差を測るジェンダーギャップ指数を見ると、2022年の日本は146か国中116位。職場や家庭での男女格差が課題として残り続けています。

女性の仕事環境については、2021年に英誌エコノミストが主要29カ国を女性の働きやすさで指標化したランキングで、日本は下から2番目の28位。労働基準法で認められている生理休暇の取得率は1%、不妊治療中の女性の2割が退職しているなど、世界基準において女性が働きやすい社会が実現できていると言えない現状です。

そんな中だからこそ、「女性の働きやすさを実現するための企業制度・施策のあり方」を見つめ直したい。Yahoo! JAPAN SDGs編集部はそう考えました。

そこで、「女性の健康支援プロジェクト」など様々な施策を展開するヤフー株式会社、女性活躍促進制度「macalon(マカロン)パッケージ」など独自の制度設計にいち早く取り組んできた株式会社サイバーエージェントによる、人事対談を企画。

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人事労務を担当するサイバーエージェント・田村有樹子さんと、ヤフー・鈴木麻未さんによる対談は、そもそも女性が働きにくい環境はどのように生まれてきたのか?という根本的な問いから、これからの企業制度・施策はどんな視点で考えていけばいいのかまで話が広がっていきました。

いろんな背景を持っている人の働きやすさ実現のために

── 2016年に女性活躍推進法が制定されて7年目となりますが、生理休暇取得率は1%、妊活・不妊治療による退職もあとを立たず、女性の働きやすさについて周囲の理解が追いついていない印象を受けます。企業制度・施策についての考え方を伺う前に、このような女性の働きにくさは何から生まれていると思いますか?

鈴木

個人的な考えですが、やはり高度経済成長期など男性が長時間働き続けることを前提に設計された企業制度や、根付いてきた価値観が、今も残り続けているからではないでしょうか。

その時代にがんばってこられた人たちがいて経済成長したことはたしかだけれど、現代においては男性だけを主体にした働き方が、女性をはじめ、いろんな背景をお持ちの方や若い世代にも合わないということが議論され始めているなと感じています。

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ヤフーのグッドコンディション推進室で、女性の健康支援プロジェクトを担当する鈴木麻未さん

田村

これまで互いについて知る機会や語る機会がなかったことも要因のひとつではないでしょうか。知らないがゆえに、女性が活躍できる機会が増えても、無意識な思い込みから我慢することが当たり前になっていた女性も少なくはなかったのではないかと思います。

鈴木さんの仰るとおり、コロナ渦でそれまでの常識や価値観を見直したり、いろんなところで議論が増えているのは新しい変化ですよね。

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サイバーエージェントの人事コンプライアンス室で「macalon(マカロン)パッケージ」設計から携わる田村有樹子さん

── 女性に向けた企業制度や施策を進めている企業は少なくない一方、「なんで女性だけ?」と"特別扱い"を疑うような声もあります。

秋橋

たとえば、生理休暇だけでなく、つわりや更年期障がいなど女性特有の事情に寄り添った休暇日を設けようとすると、「なんで女性だけ休みが増えるの?」のような議論が上がることはありますよね。

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ヤフーからは、ダイバーシティ&インクルージョン推進事務局でジェンダー・エクイティ推進を担当する秋橋仁美さんもオンラインで参加

秋橋

そうではなく、考えたいのは「そもそも個々人によって身体や体力は異なる」という事実を前提にした、公平さや公正さについてです。

女性には生涯にわたっての健康課題があり、そもそものスタートラインが違うということと、だからこそまずは同じところに土台を揃えないといけないというメッセージを伝えることは、会社として制度や施策を打ち出すときにはとても大切なことだと考えています。

制度をつくることと啓発はセット

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── サイバーエージェントは女性特有の体調不良のための休暇制度・エフ休などを含んだ福利厚生「macalonパッケージ」、ヤフーは女性の健康について勉強会や情報交換ができる「女性の健康支援プロジェクト」を、2014年から施行しています。こういった制度・施策はどのような背景から誕生したのでしょうか。

田村

私がサイバーエージェントに入社した2005年は、社員数は1000名ほどで平均年齢も27歳(2023年時点では33.3歳)と若い社員が多く、ママ社員はひとりだけでした。その後エンジニア採用も始まり、2010年頃には結婚する人やお子さんを持つパパママ社員が増えて、会社の成長とともに社員のライフステージの多様化も進んでいきました。

そういった中で2014年の2月、サイバーエージェントが取り組む、未来に繋がる新規事業や課題解決の方法などを提案する「あした会議」で女性社員を支援する案が多く出たんです。その頃の社内を見てみると育休から復帰したママ社員が100人を超えるような状況でした。社会的にも政府が女性活躍推進を打ち出していたり、ちょうど森三中の大島美幸さんが芸能活動を休止して妊活をすることを発表したタイミングでもありました。

社内外で女性支援の気運が高まる中、「導入するなら妊活支援ぐらい大きなインパクトがあるもの、そしてサイバーエージェントらしいものを」という社長の藤田からのフィードバックをもとにmacalonパッケージの設計が始まっていったんです。

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鈴木

女性の健康支援プロジェクトについては、ヤフーは2012年に経営体制の刷新にともなっていろいろな人事施策が試行されるなかで、女性の健康についても何かすべきではと、ご縁があった「女性の健康検定」という試験を管理職含めた従業員20人が受検したことがきっかけです。

女性の健康検定は、女性の健康とワークスタイルについての基本的知識があることを認定する検定で、受検した社員の多くから、「学びのある内容だった」「せっかく勉強させてもらったので何かで貢献したい」という声が聞かれました。そこで、女性の健康について話し合えるランチ会を設けるところから草の根的に活動を始めていくことにしたんです。

産婦人科の先生を招いての勉強会、セミナーと活動が発展していく中で、社内でもダイバーシティを推進する体制をつくる気運が高まっていき、女性の健康支援プロジェクトは2016年にヤフーのダイバーシティ推進のプロジェクトのひとつとなりました。

女性の健康支援プロジェクト 活動の歴史

2014年

女性の健康支援プロジェクト発足、管理職含めた従業員20名が「女性の健康検定」を受検

2015年

検定受検者の中から有志メンバーで活動開始
社内PR活動やランチタイム勉強会開催
女性の健康とワーク・ライフ・バランス アワード 奨励賞受賞

2016年

ダイバーシティ推進プロジェクトの活動を役員がバックアップする、スポンサーシップ制度開始
ダイバーシティ推進のプロジェクトの一つとして、活動を広げる
北九州センター・八戸センターでも活動開始

2017年

ランチタイム勉強会や、社外講師によるセミナー開催を継続
「生理(月経)に関する社内アンケート」実施

2018年

「働く女性の健康チェックシート」によるセルフチェックを兼ねた啓発開始
女性の健康とワーク・ライフ・バランス アワード 推進賞受賞

2019年

北九州オフィス勤務の管理職23名が女性の健康検定を受検

2020年

女性の健康とワーク・ライフ・バランス アワード 推進賞受賞
コロナ禍でリモートワーク中心の働き方に
ランチライム勉強会、セミナーはオンラインランチ開催に移行

2021年

ヤフーのダイバーシティ&インクルージョン推進体制がUPDATE
女性の健康検定オンライン受検を開始

2022年

ヤフーの統括本部長・執行役員以上全員が女性の健康検定を受検
女性の健康経営®アワード 推進賞受賞

── 「macalonパッケージ」は昨年に卵子凍結補助を新たな項目として導入し、女性健康支援プロジェクトも男性学を学ぶ機会をつくって男女の相互理解を深めるきっかけを生むなど、それぞれ制度や施策をつくって完成とするのではなく常にアップデートさせている印象です。

田中

macalonパッケージは、待機児童問題が国会前での抗議活動にまで発展した2016年に、女性の職場復帰支援に関連する3つの制度を加えました。たとえば、認可外保育園に子どもを通わせる社員への料金補助制度「認可外保育園補助」などが含まれています。

昨年新たに導入した卵子凍結補助は、女性社員による有志プロジェクトからの提案を受け、慎重に議論して反映したものです。専門医の先生や卵子凍結保管サービスを提供するグレイスグループと話し合いを重ね、プランを練っていきました。

サイバーエージェントには「挑戦と安心はセットである」という人事ポリシーがあります。安心して働ける環境があるからこそ、思い切ったチャレンジができるという視点でアップデートを重ねています。

鈴木

ヤフーに関しては、新型コロナの影響で、働き方をリモートワーク中心に変えるという大きな決断があったり、健康や働き方、ダイバーシティの考え方が、さらに進んだように感じています。いわゆるリモートワーク制度である「どこでもオフィス」が拡充され、社員が日本全国どこにでも居住できるようになったり、2021年にダイバーシティ推進体制が刷新され、「F休」や不妊治療のための「プレグナンシーサポート休職制度」といった女性の健康面で必要な制度を新たに導入しました。

F休は名前の通り、サイバーエージェントのエフ休を参考にしています。社内でアンケートを取りながら導入を検討し続けてきたので、今回、最初に始められた企業と対談ができてうれしく思っています。

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鈴木

また、アップデートをすることに加えて、制度をつくるだけでなく啓発もセットでしていくというのが本当に大切なことだなと思っています。制度をつくるだけで啓発を怠ると、つくった制度が違うメッセージになってしまうことがあるんです。

田村

とても共感します。サイバーエージェントは、女性のみに関わらず、多様な社員の長期的な活躍を支援したいという考えのもと、様々な仕組みや選択肢を広げられるような制度の導入を検討しています。

ですが、例えば妊活や卵子凍結の話題になると、子どもを産むことを推奨しているように受け取られたりすることもあります。決してそういう意図ではないので、社員と対話するときはもちろん、社外へ発信するときも気をつけるようにしています。

鈴木

生き方を押し付けたいわけではないということですよね。ニュースなんかでも、「子どもを産まないのは女性側の問題」のような報じられ方をすると、女性としては、「仕事で活躍して子どもも産まないといけないんだ」と非常にプレッシャーを感じてしまう。

先ほど田村さんが「選択肢を増やす」と仰っていましたが、その通りで。「企業制度とは個人に決まった生き方を押し付けるものではなく自分の人生を広げる選択肢なんだ」ということは、どんな企業制度や施策を設けるにせよ、その内容と共にしっかり啓発していきたいポイントです。それが、「知らなかったことで、子どもを産み育てながら昇進を目指すという選択肢が気づかないうちに消えていた」といった状況を回避することにつながると思っています。

大切なのは、いろんな背景を持つみんなの"当たり前"を増やしていくこと

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── 企業制度や施策とは何のためにあるのか?というのは、受け止め方によって女性自身のライフプランだけでなく周囲の反応も変えるものだと思うので、みんなで一緒に考えていきたいことだなと思いました。

鈴木

みんなで一緒に考えるという点では、そもそも女性だけが健康や、育児と並行してのキャリア形成についてのリテラシーを高めないといけないのか?というところから見直したいですよね。ヤフーでは、新しい制度を導入するたびに性別に関わらずに認知度を測るアンケート調査をしたり、女性の健康支援プロジェクトからも相互理解を深める勉強会を実施したりしています。

健康リテラシーで言うと、たとえば、著名人が40歳くらいで妊娠したというニュースを見ると、そこがリミットなんだと勘違いしてしまう人も少なくないと思います。ですが、妊娠のリミットというのは実際は個人差がありますし、卵子凍結保存などの先端技術によって変動もすることです。そういうリテラシーを男女共に、企業に勤める前の大学生頃から持っていけたらいいと思っています。

田村

ここから先、女性が長く企業で働きやすさを獲得していくためには、女性だけでなく、LGBTQの方、障がいを抱える方など、いろんな背景を持つみんなの当たり前を増やしていくことが大切ですよね。

当たり前のことを何でも当たり前のこととしていく風土ができた結果、女性自身が「この会社で長く働きたい」と思えるんじゃないでしょうか。

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鈴木

当たり前を増やしていくって、本当に大切な感覚ですよね。だから私、「女性に優しい企業」みたいな言い方とかも、優しいことをしているんだっけ?とちょっと気になっていて。

秋橋

「優しい」という言葉は、男女の公平性に重きを置くジェンダーエクイティ(Gender Equity)の観点からも気になってしまいますよね。もちろん言葉の奥にある本当にやりたいことは間違っていないのだろうけど、その言葉が持つ印象でつまずいてしまうのはもったいないことだと思います。

鈴木

優しいって言うと、何かその、可哀想だからしているというニュアンスで受け取られてしまう可能性もあると思っています。女性も含め、一緒に働く多様な人たちが、当たり前に働きやすくなるために、制度や施策を実施するという姿勢でありたいですよね。

「当たり前」に取り組まない企業は、選ばれなくなる

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── ここまでお話を聞いて、「当たり前になっていないことに取り組む」というのが、企業制度・施策を考える上でのひとつのヒントかなと感じました。働きやすさについて今後、企業制度・施策を通して変えていきたいことはありますか?

鈴木

まだまだ考えていかないといけないことは、「子どもを産んで職場復帰はできるけれども、その後に活躍しづらい」のような状況についてだと思っています。あらゆる選択肢を選べるようにならなければ、いつまでも女性が何かしらの負担を背負い続ける状況は変わっていけないのではないかなと。

田村

何かを我慢したり、どちらかしか選べないような状況を前提とせず、女性が自分の人生を設計し、主体的に選択していけるというのは目指すべきところですよね。

会社全体としても、そういった当たり前の実現を目指す姿勢を、経営メッセージとして伝えていかなければ、会社の未来を担う学生や若い方々からもこれからの時代は選ばれなくなっていくのではないかと思っています。

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鈴木

そうですね。ヤフーでは、会社と従業員は、選び選ばれるというイコール・パートナーの関係性であり、多様な働き方の選択肢の中から選ぶ際に何か壁があるのであれば、それを取り除いていくという考え方でいます。

「女性活躍」という言葉が聞かれるようになって、一昔前よりも女性の働き方を見直す議論が活発化しつつあると感じます。その中で、「なんで女性ばかり?」のような声もありますが、今は世の中全体でいろんな変化が起こっていて、女性の働き方に関する変化はその流れのひとつに過ぎないと感じています。

これまでに多くの方がつくってくれた流れから、さらによりよい変化を起こしていくために、これからもっと多くのことをアップデートしていかなければいけないでしょうし、せざるを得ないと思っています。

ヤフーの健康施策で相談させていただいている産婦人科の先生がよく仰るのは、女性の生涯に関わる健康のための制度は次世代の健康にも関わるので、それは女性だけでなく、日本社会全体の豊かさに関わるということ。

ですから、この記事を読む方と、どうすればもっと社会がよくなるのかという視点で、現状の企業制度や施策について一緒に考えてみたいと思っていますし、いいアイディアはぜひ参考にさせていただきたいと思っています。

013

\ さっそくアクションしよう /

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