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豊かな未来のきっかけを届ける

豊かな未来のきっかけを届ける

制度づくりの原点は、どこまでも一人の痛みに寄り添うこと #豊かな未来を創る人

Yahoo! JAPAN SDGs編集部

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36歳を迎えた現在、最年少参議院議員として働く安江伸夫さん(愛知県選挙区)。かつては地域に根ざした弁護士として、人々の日常にあるさまざまな相談に乗ってきました。弁護士時代から一貫して見つめてきたのは、人間が生きる中で直面する苦しみや痛みだと語る安江さん。政治の道を歩み始めた理由や、政治という手段を通して実現したいことを聞きました。

安江伸夫(やすえ・のぶお)

公明党
1987年、愛知県名古屋市生まれ。弁護士。愛知県立半田高等学校を経て、2009年創価大学卒業。同法科大学院を修了した2013年、司法試験に合格。2014年12月、愛知県弁護士会に登録。旭合同法律事務所に入所。2019年、参議院議員に初当選。現在は、公明党学生局長、青年委員会副委員長、中央規律委員会委員、愛知県本部副代表、国会対策副委員長、内閣部会副部会長、農林水産部会副部会長。裁判官弾劾裁判所裁判員。参議院農林水産委員会委員、消費者問題に関する特別委員会理事、憲法審査会委員。法務博士、防災士。

祖母の介護に奮闘する母の姿

「政治家として自分が日々向き合っているのは、社会に暮らす一人ひとりの人であることを忘れたくない」と語る安江さん。その思いの原点は、幼少期にあったと振り返ります。

「今思うと恥ずかしいのですが、幼い頃は、正義のヒーローに本気で憧れていたんです(笑)。日曜の朝になると、『◯◯レンジャー』や『◯◯戦隊』を観るため、テレビに夢中でかじりついていました。それで将来は、弱い立場の人や困っている人を守る人間になるんだと思っていたんです」

そんな思いを抱いていた小学2年生の頃、父方の祖母のリウマチが悪化。介護のために、家族で同居をすることに。仕事で多忙を極めた父に代わって、母が主な介護の担い手となりました。祖母が亡くなるまでの5年間奮闘する母の姿から、他者を守るとはどういうことか学んだと安江さんは話します。

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「母はもともと明るく楽天的でしたが、日々身体が思うように動かせなくなっていく義母を世話することは、想像以上に大変だったと思います。

病院に連れて行ったりお風呂に入れたりといったあらゆる介助に加え、夜中に祖母がトイレで転び、大きな声で母の名前を呼ぶことも。幼い3人の子育てと介護で、母がノイローゼのような状態になった時期もありました。

人が生きていくということ。そこには苦しみや痛みがあるのだということを、このとき初めて知ったのです。そして、それでもなお笑みを絶やさず、他者のために力を尽くそうとする母から、人間の強さや優しさも知りました。

そんな母の姿を間近で見る中で、正義のヒーローへの漠然とした憧れは、実社会を生きる上で苦しみや痛みを抱える人の力になりたいという、確かな思いに変わっていきました」

そうした思いを実現する手段として、安江さんが "法律" と出会ったのは高校生のとき。進路指導の一環で、裁判官や検事、弁護士など、法曹界のOB・OGに話を聞く会に参加したのがきっかけでした。

「正義の立場に立って、さまざまな困難から人を守る仕事について熱く語る法律家たちの言葉に、自身の思いと重なるものを感じました。弁護士となり、法律という武器を使って、社会の不条理や不合理で泣いている人を救おうと決めました」

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個人の抱える痛みの背景にある社会課題

司法試験を通過した安江さんは、地元愛知県の法律事務所で約4年間、地域で暮らす人々のあらゆる相談に乗る、いわゆる"街弁"として働きました。

DVに苦しむ女性や、ブラック企業でパワハラに悩む青年、親族の金銭問題に巻き込まれた高齢者ーー。さまざまな背景を持つ人の話に耳を傾ける中で感じたもどかしさが、政治の道に入る背中を押したと言います。

「相談に来る人々が直面する人生の困難。それら個人の問題のほとんどが、社会的な問題とつながっていると改めて思い知ったのです。

例えば、ある若者から自己破産手続きの相談をされたときのこと。経緯を聞いてみると、多額の奨学金返済に困窮し、消費者金融に手を出して返せなくなったという現実がありました。弁護士として手続きを進めながらも、そもそも奨学金の負担自体を減らすための制度を整える必要があるのではと感じました。

また、生活再建を目指す未婚のシングルマザーの相談に乗ったときには、特に『未婚』のひとり親への支援策があまりにも不足していることを実感しました。というのも当時は、未婚の場合、配偶者と離婚や死別した場合に比べて、同じひとり親でも税金の控除が十分に受けられない理不尽な制度となっていたのです。そうした制度の是正に加え、さらなる経済支援策も考えるべきだと思いました。

このように、既存の法律の中で対処するだけでは、状況を根本的に解決できないと実感することが増えていったのです。より実態に即した法律となるように議論すべきでは、と感じるようになりました」

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約1000件の法律相談に携わった弁護士時代。

そんな課題感を抱えていた時期、現在の所属政党から候補者として出馬しないかと打診が来ました。2019年、参議院選挙に出馬した安江さんは、32歳で国会議員となります。

「政治の道に進むかどうか、正直最初は迷いました。ですが、個人に寄り添う弁護士から社会に働きかけていく政治家へ、いわば点から面に対するアプローチに変えてみることに、一つの意義を感じました。

たとえ弁護士として一人ひとりの相談に直接応じられなくても、政治家として制度を改善していくことで、同じ状況で苦しむ多くの人の課題解決につなげられるのではと。そうすることで、社会の不条理や不合理から人を救うという当初の目的を、さらに具現化できるかもしれないと考えました」

幸せの最大公約数を模索する

政治家として働いてきたこれまでの4年間、弁護士のときとは異なる仕事の難しさを感じてきたと安江さんは話します。

「弁護士時代はいわば個人プレーが中心でしたが、議員というのは一人でできる仕事はほぼありません。党の仲間、あるいは超党派の議員連盟、そして最終的には国民にコンセンサスをとって物事を前に進めていく必要があります。

さらにその際には、立場によって複雑に対立する利益を全体で調整しながら、一つの政策に収斂していく、つまり利益衡量する必要があります。目の前のクライアントの利益を最優先にしていた弁護士時代とは違う視点が、日々求められています。

どうすれば、より多くの人にメリットが渡る最大公約数的な政策が実現できるのか。常に悩みながら、より広い視点を持って粘り強く取り組んでいくのが、政治家の仕事なのだと改めて感じています」

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そんな難しさを感じる一方、訴えが形となっていくやりがいを安江さんは感じています。特に力を入れてきたのは、次世代のためにより良い未来を残していくこと。党の学生局長として、定期的に学生との懇談会を開くなど、若者の生の声を聞きながら政策につなげてきたと話します。

「例えば、弁護士時代にも多くの相談があったように、学生たちとの懇談会でも奨学金の返済負担を軽減してほしいという切実な声が多くあがってきました。私自身も大学時代の学費のほとんどを奨学金で賄っていた一人として、その苦労は痛いほど理解できます。そのため、貸与型ではなく、返済不要の給付型の奨学金をもっと増やしていくべきだと訴え続けてきたところ、2023年6月『こども未来戦略方針』が発表され、例えば給付型の奨学金を利用できる対象を広げるなど、高等教育の負担軽減策を大きく前進させることができました。

そのほかにもコロナ禍では、親からの仕送りやアルバイトの収入が途絶えて、学業を諦めざるを得ない状況にいる学生の声が、毎日のように届いていました。それを党内で議論をして議会でも訴えたところ、学生への経済的支援が強化され、例えば1人最大20万円の給付の実現にもつながっていきました。

もちろんすべて個人の力だけで結果に結びついたとは考えていません。周囲の人とともに地道に訴えてきたことで、制度が形となって世の中に拡がっていく。そこには、懸命に撒いてきた種が一つずつ芽吹いて実を結ぶような喜びがあります」

若い世代との対話の場を持ち続ける

最年少参議院議員として、引き続き若い世代の声を政治に届けていくことが、これからの使命の一つだと安江さんは考えています。

「私自身、若い世代の代表というとおこがましいのですが。やはりシルバーデモクラシーといわれるように、若年層の声が反映されにくいという課題が依然としてあります。実際に学生たちとの懇談会では、もっと自分たちが政治に参画できるような環境を整えてほしいという声が頻繁にあがってきています。

一方、若者の投票率の低さの背景には、『自分が声をあげても世の中は変わらない』という無力感があるようにも感じます。若者たちに政治をより身近に感じてもらうには、私たち政治家自身が寄り添う姿勢を示していく必要がある。だからこそ、これからも若い世代との対話の場を作り続けます」

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党の学生局長として、学生の悩みや疑問、意見、要望に答え、政策に生かすための懇談会「Qカレ」を積極的に開催。

政治家となり多くの人を想定しながら制度を考える立場になった今も、あくまで原点は一人の人間に寄り添うことだと話す安江さん。この先実現していきたいのは、その一人ひとりの多様な在り方が尊重される社会です。

「今の社会では、少数派であることで排除されたり、自分らしく生きることが困難になったりする人が未だ少なくありません。ですが、生まれ持った個性や価値観の違う人たちが、互いに慮りながら尊重しあえる世界を、私は次の世代に手渡していきたいです。

自分の権利を尊重してもらいたければ、誰かの権利も同じように尊重する。政治の仕事を通して、そんな価値観を社会全体に醸成させていきたいです。

そしてこれからも、多様な一人ひとりの声を政治に届けていくことで、少しでも多くの人が自分の思い描く生き方を自由に選択できる世の中を作っていけたらと思います」

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  • 取材・文木村和歌菜

    写真西田優太

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