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豊かな未来のきっかけを届ける

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海藻が織りなすアートと科学の世界 ~元看護師・高山優美(まさみ)氏が魅せる自然の奥深さ~

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食卓からアートへ、海藻の知られざる魅力

私たちの食卓に馴染み深い海藻。味噌汁の具材やサラダ、おにぎりの彩りとして、その姿は決して珍しいものではない。
しかし、その海藻が、繊細で美しいアート作品へと姿を変えることをご存知だろうか。

「最初の仕事は看護師でした。でも23歳の頃、趣味でダイビングを始めたんですよ。海の中で出会った小さな生き物たちが、生まれた瞬間から懸命に生きる姿に深い感銘を受けました」
と、嬉しそうに語るのは現在、海藻おしば協会の講師として全国でおしばアート普及のために活躍する高山優美(まさみ)さんだ。

高山優美さん

高山優美(たかやま まさみ)

1975年生まれ
海藻おしば協会 事務局長
日本自然保護協会自然観察指導員
PADIダイビングインストラクター
看護師時代に趣味として始めたダイビングで海の自然に魅了された。環境学習としての海藻おしば教室を通して海、山、川、人のつながりを伝えたいという思いで活動中。

子供たちの探究心を全国に広める活動

高山氏

海藻おしばアートが子供たちの探究活動にとって素晴らしい素材になると感じています。身近な食材である海藻を通して、自然の不思議さ、科学の面白さ、そして環境問題への意識を育むことができる。楽しみながら学べるんです。(海藻おしばアート)を単なる趣味としてだけでなく、自然との繋がりを再認識し、環境問題を考えるきっかけとなる活動として捉えています。万葉集にもその名が登場するほど古くから日本人の生活に関わってきているんですよ。歴史と文化があるんです

海藻自体はゴミではない。しかし、海で漂着海藻を拾っているとプラスチックなど海洋ゴミも目につき、ワークショップの海藻素材集めと海洋ゴミ拾いも同時に行っているため、それを拾い、アートとすることで、ゴミが減るというわけである。立派なビーチクリーンだ。

その海藻が今、大ピンチを迎えているというから大変だ。
気候変動によると思われるが、陸に比べてゆっくりではあるが、海水温も上昇している。そうなると活発に動き出すのがウニだ。そう、あの高級食材のウニである。

このウニたちは海藻を餌とする。
そのため、海藻たちはどんどん減少しているのだ。
漁業に携わる人は、ウニを駆除し、昆布を養殖することに力を入れているが、このやり方は対処療法であり、根本的な解決にはならない。

おしばアートをきっかけに現代が抱える海洋保全にも興味をもってもらいたいと筆者は考える。
そのためには、まず高山さんのような人が子どもたちにその海のすばらしさを伝え、「この海を守りたい」と思う子どもを増やすことが大切だ。

ワークショップの最中
思い思いの海藻を手に取って感触を確かめる子どもたち

陸上とは全く異なる海という自然界の美しさに心を奪われ、「この感動を多くの人に伝えたい」という強い思いが、看護師からダイビングインストラクターへの転身だったと振り返る高山さん。しかしダイビングは、年齢や持病のため出来ない人がいる。

高山氏

(海に)潜れない人でも、海の自然や大切さ、命のつながりを感じてもらいたいと思うようになったんです。そこで、日本自然保護協会というところで、自然観察指導員という資格を取りました。海も自然なのに、そこの指導員になる人は多くが陸の自然だったんです

たしかに自然観察指導員というと、ネイチャーガイドのようなイメージがある。

高山氏

その頃、今の海藻おしば協会の名誉会長に出会いました。海藻というのは知れば知るほど面白いんです。奥が深い。ただ最初は『綺麗だな、楽しいな』と思っていたのが、よくよく考えてみると、あることに気付いたんです

それは潮の満ち引きによって水中と陸上の両方の環境で生きるという驚くべき生態を持つことだったそうだ。その生命力に改めて魅了されたと感慨深く話してくれた。

高山氏

そして、自然が好きな人であれば皆、楽しめるのが海藻です。お年寄りでも歩いて海に行けば自然を感じ、なおかつ、普段食べている海藻がこんなに綺麗なのかを知ることができるんです

これらすべて海藻から出来たおしばアートです。
これらすべて海藻から出来たおしばアートです。

海藻おしばアートの制作において、高山氏が大切にしているのは「形を生かしたい」という思いだ。変に作り込まず、海藻が持つ自然の形や色を最大限に活かすことで、素材本来の美しさを引き出す。
この考え方は、患者さんの個性や力を引き出す看護の経験とも共通する部分があるのだろう。また、子どもたちとのワークショップでも、そのことを意識し、それぞれの感性を大切にしているそうだ。

一口に海藻といっても、その種類は多彩だ。色も形も、同種であってもどれ一つ同じものはない。
さらに、ところてんや寒天の原料が海藻であること、アイスクリームや歯の型取り材にも海藻の成分が使われていることなど、私たちの生活に深く関わる海藻の科学的な側面も紹介され、知的好奇心を刺激するのが高山さんのワークショップの特徴と言える。

高山氏

ワークショップの最中に何度も『面白いですよね!』と話しかけてしまうんですよ

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参加者と一緒に海藻の奥深さを楽しむ姿
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海藻にはさまざまな色の種類があることを説明する高山氏

海藻は、陸の栄養分が川を伝って海に流れ込むことで生きている 。この自然の循環を知ることで、参加者は海藻を通して陸と海の繋がり、ひいては地球全体の生態系の繋がりを感じることができるようになる。

高山氏は、海藻おしばアートを通して、単に美しい作品を作るだけでなく、その背景にある自然の摂理や生命の神秘を伝えたいと考えている 。

海藻は、美しさ、美味しさ、そして海の中で光合成をし、水質浄化をするという3役を持っている。海底で、それはまさに「縁の下の力持ち」と言えるだろう。

  • 取材・文REAL DOCS編集長/ドキュメンタリー考察ライター 栗秋美穂

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