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豊かな未来のきっかけを届ける

豊かな未来のきっかけを届ける

会社員から国会議員へ。新たなふるさとで地域に根付き、日本の豊かな未来に挑戦 #豊かな未来を創る人

向山じゅん(右)川邊健太郎(左)

LINEヤフー株式会社代表取締役会長の川邊健太郎が聞き手となって、政治の担い手にインタビューをするシリーズ。今回は、衆議院議員(北海道8区)の向山じゅんさんに話を聞きました。

もともとは総合商社で働いていた向山さん。「日本を良くしたい」という思いのもと、会社員をやめて政治の道を志し、北海道で一から政治家としてのキャリアを築き始めました。海外で過ごした幼少期と、道南で地域の課題に向き合う今。マクロとミクロの視点を持つ向山さんの考えを聞きながら、二人の対話を通じて日本の未来について考えます。

向山じゅん(むこうやま・じゅん)

自民党衆議院北海道第8選挙区支部長
1983年埼玉県生まれ、道産子夫と小学生の娘と函館市在住。2歳から中学卒業までペルー、日本、アメリカ、アルゼンチンに住む。慶應義塾女子高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒業、ハーバード大学公共政策大学院修了(行政学修士)。三菱商事で13年間、発電所・港湾などのインフラ開発、企業再生、インターネット事業などにとり組む。不妊で苦労した経験を機に政治家を志し、ハーバード大学院に私費留学。2024年10月の衆議院議員選挙にて初当選。

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)

LINEヤフー株式会社代表取締役会長
1974年、東京都出身。青山学院大学法学部卒業。大学在学中にベンチャー企業電脳隊を設立。2000年にヤフーへ入社し、「Yahoo!モバイル」担当プロデューサーや社会貢献事業担当プロデューサーなどを歴任。2006年にYahoo! JAPAN 10周年記念非営利事業として「Yahoo!みんなの政治」を立ち上げた後、「Yahoo!ニュース」などの責任者に就任。2018年ヤフーの代表取締役社長CEOに就任。LINEとの経営統合を行い、2021年Zホールディングス代表取締役社長Co-CEOに就任。同年6月にソフトバンクグループの取締役に就任。2023年4月Zホールディングス代表取締役会長に就任。同年10月グループ内再編に伴いLINEヤフー代表取締役会長。日本IT団体連盟会長。

「日本のために」が私のパッション。会社員から政治の世界へ

川邊

もともとは商社で働いていたそうですね。なぜ政治家になろうと考えたのでしょうか。

向山

幼いころから培われてきた「日本がもっと良い国になってほしい」という思いが大きかったです。幼少期、父の仕事の関係でペルー、アメリカ、アルゼンチンに住んでいた時期がありました。それぞれの国の慣習や教育、経済など、いろいろな側面から日本を見ていて「日本って良い国だな」と感じて。日本への愛情が深まり、自分のアイデンティティとしても確立されていったんです。

高校からは日本で過ごし、大学卒業後は日本の良いものや魅力を海外へ広める仕事をしたいと考えて総合商社に入社しました。でも、仕事を続けるうちに、日本が国際競争力を失っていくことへの焦燥感が大きくなっていきました。ビジネスで解決できることはあっても、根本的な構造を国が変えていかなければならないと思うようになったんです。ただ、商社の仕事が楽しく、仕事を変えてまで政治の世界に挑戦しようとは考えていませんでした。

そんな中、30歳を過ぎて妊活に集中するために休職しました。でも、なかなか子どもができず、それまであった「理想の家族」や「素敵な仕事」というレールから一旦外れて、まっさらな状態で自分と向き合う時間ができたんです。そこで自分が本当にやりたいことを改めて考えてみたところ、日本が成長すること、日本に住む人たちが幸せになることこそ、私のパッションだと思いました。政治家を目指そうと決意し、会社をやめて大学院へ行くことにしたんです。

川邊

最近政治家になる方は、例えば子育て政策など「この問題を解決したい」と、取り組みたいテーマがはっきりしているタイプの人が多い印象ですが、向山さんはそれよりかは、もう少し広いテーマで「日本というものを、構造から何とかしたい」といった思いなのですね。もし海外に行かずにずっと日本で育っていたら、日本のために尽くしたいと思うようになっていたと思いますか。

向山

思わなかったかもしれないですね。やっぱりほかと比較する中で日本にアイデンティティを持ったり、「日本のために」という思いを持つようになったりしたのだと思います。

向山じゅん

地方選出・地域に根ざす議員としての役割

川邊

日本の国力を上げていくために、どのような政策に関心を持っていますか。

向山

元々はシンクタンクで経済安全保障・サイバーセキュリティ等の政策に取り組んできたのですが、今は一次産業とエネルギーの政策の優先順位が上がっています。選挙に出ると決めてからこの一年半は、選挙区である北海道の道南でほぼ毎日活動をしてきました。当事者から直に話を聞く中で、日本を支える産業を支えたいという思いが強くなっていきました。

川邊

なるほど。それはすごくポジティブに捉えれば、具体的な課題が見えてきたことで、地に足がついたということですよね。一方で、ネガティブに捉えるつもりは全くないのですが、国際感覚やマクロな視点があるのに、選挙区の課題にかなりフォーカスをしているというようなみたいな見方も、なくはないと思いますが、ご自身の中ではどのように整理されているのでしょうか。

向山

日本の国際競争力を上げるために、根本的な構造の課題に取り組むという根底は変わっておらず、そのための具体的な政策の一つの分野が一次産業やエネルギーだと考えています。北海道に移住してから、地方選出の議員の役割や意義をより具体的に感じるようになりました。東京など都市部の選挙区から立候補する人たちが私たちがいる北海道・道南のような地域の課題を具体的に代弁するのは、やはり難しい。北海道は食料自給率が200%を超えており、自給率が38%しかない日本の食を支えています。農林水産業の現場の厳しい実態を理解して地域の声を本当に届けられるのは、私を含めても限られた議員しかいない。そういう意味で「私がやらなければ」という自負があります。加えて、根本的な問題に対処していくためには、漁業でいえば資源管理や漁業権のあり方など他国との比較や古いルールのアップデートなどマクロな視点で産業構造そのものを変えることを考えながら、同時に、海水温上昇での不漁、担い手不足、物価高騰など目の前の人たちの課題を解決していくことの両面が重要だと考えています。

知名度も地域での繋がりもゼロ。"ふつう"の人が政治家になるには

川邊

向山さんのように、もともと地域に特別な地盤があったわけではない方が、全く知らない土地でどのようにして政治家への道を開いていったのでしょうか? いわゆる「三バン(地盤・看板・カバン)」がない状態からのスタートは、かなりハードルが高いイメージがあります。

向山

おっしゃる通り、小選挙区で名前を書いていただくには、世襲であったり、元々の知名度、地域での長年の活動といった基盤が有利に働きます。そうしたものがない私のような者が、候補者として手を挙げるのは非常に難しいのが現実です。ただ、そういった状況でも門戸が開かれているのが「候補者公募」という制度です。私はその公募に手を挙げて、最終的に北海道8区の党支部長に選んでいただきました。与党の場合は現職議員が多いので公募があるといっても、相手が非常に強いなど厳しい選挙区が多いのですが、それでも今まで政治と接点がない人間にとっては大きなチャンスであり、可能性だと思います。

川邊

公募で選ばれてから、具体的にはどのように信頼を得て、選挙に向けて活動されたのですか。

向山

私の場合は地縁が薄い所謂「落下傘候補」と見られていましたので、まずは「この人は腰掛けではなく、本気で地域のために働く覚悟がある」と示さなければ、誰も名前を書いてくれないだろうと考えました。そこで、函館を生涯のふるさとにする決意を伝えながら、子育ての両立のために両親にも移住してもらい、とにかく地域を回って人に会い、話を聞くことを徹底しました。雪でも毎朝街頭に立ったり、地域の顔役である経営者や漁師さんにお会いして人を紹介してもらったり、町会長さんを訪問して地域の集まりへと繋げていただく...そういう地道な活動を、1年半の間、1日を除いて毎日続けました。

川邊

1年半毎日ですか。大変な努力ですね。そこまでのコミットメントが、やはり政治家になるためには必要なのでしょうか。一方で、もっと多様な人が挑戦しやすくするために、ハードルを下げるべき、という議論もありますよね。

向山

まさに、そこは私自身も大きなジレンマを感じている点です。シンクタンクで党の改革に関わっていた時は「多様な人材、特に女性が挑戦しやすいようにハードルを下げよう」と議論していたのに、いざ自分が選挙区に入ると「信頼を得て名前を書いてもらうには、普通以上のコミットメントと覚悟を見せなければ」と考えてしまう。ビジネスでも、大きな成功には徹底的なコミットが必要な一方で、もっと気軽に挑戦できる環境も大事、という両面があると思いますが、川邊さんの考え方もぜひ伺いたいです。

川邊

ビジネスは、とにかく頑張って大きな何かを得るやり方から、こじんまり事業を営むなど、政治家よりも選べる道が多いと思います。ただ、ビジネスでも短期で大きな成果を得たければ相当無理をしない限り無理でしょうね。選挙もどちらかというと短期で成果が求められるシステムだと思います。そういう意味では、私たち有権者たちが、その人を知っているかという知名度や、会ったことがあるという人間関係などではなく、ちゃんと政策を見て投票するようになっていけば、そういう負担も減るかもしれませんね。

川邊健太郎

川邊

1年半の活動を経て、実際の選挙での手応えはいかがでしたか。

向山

活動を通じて、特に同世代や経営者の方々など、変化を期待される層からの支持の広がりは確かに感じていました。急速な過疎や人口減少など地域の現状への危機感が強いからこそ、新しい視点に期待を寄せていただけたのだと思います。しかし、新人の知名度の無さや党への逆風もあり選挙戦は非常に厳しく、結果として小選挙区では及びませんでしたが、最終的に比例代表で議席を得ることができました。8万票もの期待を寄せていただいたことに、身が引き締まる思いです。

川邊

大変失礼ながら、向山さんはタレントや著名人だったわけではありません。だからこそ、そのように公募に手を挙げ、地道な活動で地域の人と繋がり、課題を聞いて信頼を得ていく、というプロセスが、いわゆる"ふつう"の人が国会議員を目指す上での、一つのモデルになるのかもしれないと感じました。

向山

そう思います。特別なバックグラウンドがない人間にとっては、与えられたチャンスに全力で応えるしかない。幸い、全国で公募の機会はありますし、新しい人材が挑戦するチャンスは広がっているとも感じています。

川邊さんと向山さん

挑戦する地域と国へ。豊かな未来への確かな一歩を

川邊

国会議員として、これからどのような未来を実現していきたいですか。

向山

私が政治家として、今まさに取り組まなければならないと考えているのは、日本の根幹を支える食料自給率とエネルギー自給率を高め、未来への礎を築くことです。特に、農林水産業の担い手不足や高齢化は待ったなしの状況ですが、その根本原因は「稼げない」ことにあります。漁業は資源枯渇と所得確保の難しさにあえぎ、農業も多くの担い手が疲弊している。このままでは、日本の食が根底から揺らぎかねません。私は、この構造的課題に正面から向き合い、農業も漁業も、意欲ある若い世代が夢を持って挑戦できる稼げる産業へと転換させたいんです。

エネルギー安全保障も、国の存立に関わる喫緊の課題です。道南で進む洋上風力発電のようなプロジェクトを確実に前進させ、クリーンエネルギーを活かしたデジタル産業の誘致・育成など、地域の持続的な発展に繋がる取り組みを力強く推進していきます。

川邊

強い決意を感じます。一方で、"1年生議員"として、現在地と課題についてはどうお考えですか。

向山

もちろん、1年生議員一人でできることには限りがあります。例えば現在、25年ぶりに農業基本法が改正されて、法改正に伴って基本計画を策定しています。その内容に地元の切実な声を反映させるべく、関係省庁等との議論に全力で取り組んでいます。また、自治体が挑戦するプロジェクトがあれば、国との橋渡し役として一緒に汗をかいています。しかし、大きな改革の青写真を描き、それを牽引していくには、まだ仲間も実績も足りないのが現実です。ただ、だからといって立ち止まっているわけにはいきません。今は、一つ一つの課題に真摯に向き合い、小さな成功体験であっても着実に積み重ねることで、地域や国政の場で「向山になら任せられる」という信頼を築き上げている最中だと考えています。

川邊

そうした地道な活動が、いずれ大きな政策実現に繋がっていくのですね。その先に見据える、国会議員としての最終的な志は何でしょうか。

向山

今の日本には、「もうダメだ」「未来は暗い」という閉塞感が蔓延しているように感じます。しかし、私はそうは思いません。海外での経験も踏まえ客観的に見れば、日本にはこれだけ安定した社会基盤があり、経済状況も、もっと厳しい国々に比べれば、まだまだ底力があるはずです。なぜ、私たちはこれほどの閉塞感に囚われなければならないのでしょうか。私が創りたいのは、この閉塞感を打ち破り、誰もが「日本の未来は明るい、挑戦しよう!」と前を向ける国です。失敗を恐れずに挑戦する人が増え、その活力が次の豊かさを確実に生み出していく。そんな未来を、皆さんと共に創り上げていきたい。そのために、私は全身全霊で国政の場で力を尽くしていく覚悟です。

川邊さんと向山さん
  • 安藤ショウカ

    撮影西田優太

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