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古着ブームの裏側に高まる若者の環境意識? 「優しい目線」の買い物が欲しい未来を引き寄せる

Yahoo! JAPAN SDGs編集部

10代、20代の若者の間でいま、何度目かの「古着ブーム」が来ているという。原宿などのブランドショップがコロナ禍により閉店を余儀なくされる中、その跡地に古着店が続々と誕生。「いいものが安く買える」「個性的で他の人と被らない」といった、いかにも若者らしい理由で古着を選ぶ人が増えているようだ。

他方、高まる環境意識や倫理観が彼らの購買行動を変えているという指摘もある。「インターネット時代のワークウェア」を掲げる独立系ファッションブランド「ALL YOURS」の代表・木村昌史さんは、交流のある若い世代から「新品の服に買いたいものがない」という声を聞くという。

ある種、消去法のようにして古着に走っているというのだが、そんな彼らこそがいま「もっとも先進的」であるとして、木村さんはポジティブに受け止めている。

高まる環境意識や倫理観と古着という選択にはどのような関係があるのか。若者の意識がそこまで高まっているのだとすれば、それはなぜか。そんな時代にファッションブランドと消費者はどのように関係を結べばいいのだろうか──。

知れば知るほど「買いたい服」が見つからない

── 木村さんの周りには環境とか倫理とかを理由に古着を着ている若者がいると聞きましたが本当ですか?

ええ、全体からの割合はわかりませんが、周りにはそういう人が多いです。「どの新品を買っていいのかわからなくなってしまった」と言って古着に走っている人が。

映画『トゥルーコスト』を見たり、グレタ(トゥーンベリ)さんがスピーチしているのを聞いたりして「不都合な真実」をいろいろと知ってしまった結果、何を買っていいかわからなくなってしまったと。知った上でそのまま消費していると、自分も非倫理的な振る舞いに加担しているように感じてしまうみたいで。

そういう人が古着に走る気持ちは自分もよくわかるんです。着ていて罪悪感がないから。何をやるにも大体はどこかに負荷がかかるものだけれど、古着に関しては流通の輸送コストくらいのものなので。

── 昔と比べれば環境や倫理への配慮を謳うブランドも増えていると思うんですが、「選べない」っていうのはどういうことなんでしょう?

確かにそういうブランドも増えていますよね。うちは環境にいいとかサステナブルということは特別謳っていないけど、私自身がそれまで勤めていた大手を辞めて事業を始めたのも、もともとはそこですし。

私が独立したきっかけのひとつは『あなたのTシャツはどこから来たのか?』という本を読んだこと。Tシャツも農作物なんですよ。もともとは綿だから。土から生えてきている。自分の着ているTシャツがどういう綿でできていて、どこの誰が働いた結果としてできているのかを綿畑から追っていくのが、この本です。

さらに遡れば、1999年にナオミ・クラインが書いた『ブランドなんか、いらない』という本。アパレル業界の大量生産を批判する本の先駆けで、ここから『トゥルーコスト』にもつながっていく。

このあたりの本がきっかけとなって、エシカルとかサステナブルとかに興味を持ち、いまの事業を始めたんです。

でも、ひとくちにエシカル、サステナブルというけれども、解きほぐしていくと、3つの論点が絡み合っていると思うんですよ。

── 3つの論点?

ひとつは『トゥルーコスト』で描かれているような、グローバリゼーションによる賃金格差の問題。搾取の構造が生まれているという話です。最も有名なのは、2013年にバングラディシュの雑居ビルに入っていた縫製工場が崩落して、多くの人が亡くなった事故。「自分はこんなところで作っている服を着ていたのか」と多くの人が気付かされた。

ふたつめは、先ほどの『あなたのTシャツは~』にも書かれていますが、農薬で土壌汚染が進んでいくとか、綿花の栽培に水を大量に使っているといった、使用している原料の問題。環境へのインパクトが大きすぎるものを使っていないかという話です。

そして3つめが、使い終わった後の問題。大量生産大量消費からくる廃棄の問題です。

エシカル、サステナブルという文脈でアパレルが語られるときには、このあたりの論点がごちゃごちゃになっていることが多い。互いに絡み合っているから一緒に見えるのですが、ほぐしていくと、こういう要素に分けられるのではないかと。

── なるほど、わかりやすい!

ファッションブランドがこの3つの問題に真摯に向き合おうとすると、適正賃金で、環境に優しい素材を使って、小ロットの受注で回していくみたいな感じにどうしてもなる。

でも、これでビジネスをちゃんと回していくって、めちゃくちゃ難易度高いんですよ。全部が全部はやりきれない。それでもやろうとすると、「それって環境に優しいものづくりなんですか?」と問われるとそうでもないし、「フェアトレードなんですか?」と問われてもそうでもないなという、中途半端な感じになってしまう。理想を高く掲げていればいるほど、全部が中途半端になってしまっている。

またその逆に、「サステナブルです」「環境に配慮してます」「フェアトレードです」というキーワードで構成されてはいるものの、全然商品はよくないみたいなことになっているものもある。それはそれで「結局、誰がそれを着るんですか?」となってしまう。

こんな経緯で、環境意識や倫理観が高い若者ほど「買いたいブランドがない」となっているんじゃないかと私は見ています。

「かっこいい」の指標が変わってきている

── アメリカでもZ世代は環境意識とか倫理意識が高くて、それが消費行動を変えていると言われますけど、日本も徐々にそうなってきているんでしょうか。

そう感じますね。私の周りの若い人が最初にこういうことに興味を持ち出したのは、やはり『トゥルーコスト』が大きいみたい。どうもいままでの「ファッション好き」とは違う文脈でファッションに興味を持ち出しているんですよね。

── それまでの文脈って?

雑誌を見てかっこいいと思って「同じような格好がしたい!」とか。「ファッションデザイナーを目指してます!」みたいな感じで、これまでは服のクリエイティブに興味を持っている人が「ファッションが好き」と言っていたんです。

そこに2015年くらいから増えてきたのが、社会問題からファッションに興味を持ち始める人たち。「全然違うプレーヤーが業界に入ってきたな」と当時感じていました。

私はずっとファッション領域にいて、以前は大手、いまは独立してALL YOURSのような会社と、両方を経験しています。もともとはただの服好きで、「かっこいい服が欲しい!」みたいなところから業界に入ったんですけど、次第に「かっこいい服なんていつまで買い続けたらいいんだ?」みたいなことを思い始めたところから、ALL YOURSを始めました。過渡期の中で横断していったタイプの人間。だから両方の気持ちがわかるんです。

要はファッションの領域が拡張しているということだと思うんですよ。もともとは洋服の着こなしの上手な人をおしゃれとかクールと呼んでいたけれど、いまは社会のことを考えていることがクール。それもファッション、かっこいいのひとつの指標になっている。

── それはすごくいいですよね。服はそれ以前から自分を表現するものとしてあったと思うんですが、その内容が変わってきていると。

そういう変化が起きたのには、インターネットができたことが大きいと思っていて。昔は「自分はこういう人です」というのは、外見で見極めてもらうしかなかったじゃないですか。でも、いまは考えていることがあるならブログで書ける。ツイッターで言える。パーソナリティを表現できる場所が拡張しているから、表現する側もそれを受け取る側も、その総体としてその人がどういう人なのかを判断するようになっている気がします。

── でも、木村さんの周りにいる若者って特別に意識の高い人たちではありますよね? 自分で事業をやろうっていうくらいだから。

もちろんそうなんですけど、でも、一般的な若者の意識も変わり始めていると思いますよ。それにはグレタさんとか、SDGsの動きとかもすごく大きいんじゃないかな。

いまの大学生以下の世代は、学校で普通にSDGsの授業を受けているんですよね。自分たちの頃はそんな基礎教育を受けてこなかったけれど。だから私も息子に聞くんですよ。「SDGsのこととか、授業でどんな話をやってるの?」って。そうすると結構勉強になる。まだ小3なのに。その頃からやっていたら、普通に意識として根付くんだと思います。

── 教育の成果なのだとしたら未来は明るいってことになりますね。でもやっぱり引っかかるのは、なぜ若い人の行動だけが変わるのかというところ。学生時代にそういう教育は受けていなかったとしても、"おじさん世代"だって同じ情報にはアクセスできているはずで。

なんでだろう。リアリティがないのかな。

私自身はおじさんだけど、ラッキーだったのは、最初に好きになった服であり古着が、環境への取り組みが先進的なパタゴニアだったこと。その時点では環境とかの文脈は全然知らずに、ただ「見た目や色づかいがかっこいい!」みたいな感じでしたけど、そこから自然にエシカル、サステナブルといったことに触れるようになった。でも、そういった原体験のない人はそのあたりが結びつきにくいのかも。

もうひとつあるとすれば、社会人はすでに資本主義の中の経済活動に慣れてしまっているじゃないですか。その点、これから社会に出る人たちはまだ染まりきっていないから。「自分が働くとしたら?」「着るとしたら?」ということと結びつきやすいのかも知れないですね。

サステナブルよりレスポンシブル

── そんな変化があって、サステナブル、エシカルを意識しないブランドはどんどん選ばれなくなっていく。とはいえ、3つの論点が複雑に絡み合っていて、全部やろうとすると中途半端に映ってしまう。だとすると、事業者は一体どうしたらいいんでしょう?

なんでもやろう、完璧を目指そうとするから無理が出る。3つの論点のどれにフォーカスするのかを見定めていけたらいいと思うんですよね。

うまくいっているブランドでいうと、例えばアメリカの「Everlane」は、3つのうちのフェアトレードにコミットしている。原価を開示することで、適正な賃金で生産している、だから我々の利益はこれくらいだという話をしています。

「Allbirds」という会社は環境です。100%リサイクル可能な素材を使って靴を作っている。いろいろな素材が混ざっていて再利用が難しいと言われるスニーカーを再利用可能な状態にすることで、ファンの獲得に成功しています。

エシカル、サステナブルの文脈で目立っている会社は、ごちゃごちゃになっている論点を分解し、自分たちがフォーカスすべきところを見定めていると言えるんじゃないでしょうか。そこでフェアトレードから環境からなんでもやろうとすると、わかりにくくなるし、伝わりにくくなるんだと思う。

うちで言えば、フォーカスしているのは大量生産大量廃棄のところ。使った後、購入した後の話です。まだまだ道半ばではありますけど、結局、ここがどん詰まっていることがあらゆる問題の根源になっている感じがしていて。

── どういうことですか?

究極的にサステナブルなモデルとして、日本の「ボロ」という文化をご存知ですか? 着物をつぎはぎして着続けるというもの。つまり、究極的にエコとかサステナブルであるにはまず、ずっと着られて、捨てられないことが大切だなと思っているんです。

環境省の資料によれば、日本人1人あたりの年間の衣服の購入枚数は平均約18枚。手放す服は約12枚で、着用されない服は25枚。服を手放す手段はほぼすべてが「捨てる」です。

でも、捨てた服はほぼ可燃ゴミにはならないんですよ。だいたいが埋め立て地行きになる。なぜかと言えば、素材の問題があるから。マルチマテリアルだから。

スウェットジップパーカーを思い浮かべてもらえばわかりやすいと思います。基本は綿でできているけれど、ステッチはポリエステル。ファスナーは金属。しかも縫い付けられているから、分解しようとするとすごく人件費がかかる。となると、埋め立てる方がコストが安くなってしまう現状にあります。

「服は布だから燃やせるでしょ」と思いがちですけど、複合的なマテリアルで作られているから、実は簡単に焼却できるものは意外と少ないんです。せいぜいTシャツくらいなんじゃないかな。

── だからALL YOURSは「長く着られる」「捨てられない」服にこだわろうと。

それに加えて、先ほどの3つの論点で言えば、フェアトレード的なところと環境的なところは、自分たちにやれることがすごく限定的だったというのもあります。

サステナブルな糸や生地を使いたいと思っても、綿農家さんや生地屋さんを支えるためには何百トンというロットで作らないといけなくなる。自分たちの経済規模ではまず無理なんです。であれば、まずは自分たちのできるところからやろうということです。

一方でいまはアディダスの「フューチャークラフト」やナイキの「スペースヒッピー」など、経済規模の大きなプレーヤーがサステナブルなプロダクトづくりに取り組んでいたりもします。彼らの活動全部がエシカルでサステナブルというわけではないけれど、彼らは彼らで、自分たちのコミットできる範囲で責任を全うしているという感じがします。

大量にものを作れる彼らのような存在が、例えばエシカルなレザーを使おうとなるのは、自分たちとしてもありがたいんですよ。経済規模の小さい自分たちには無理でも、彼らであれば、原料にアクセスできる。そうするとそういうマテリアルが一般流通して、めぐりめぐって末端の自分たちにも使える可能性が出てくるから。

── 自分の責任領域を見定めて、そこでちゃんと責任を果たしていく。みんながそれぞれの領域でそうすれば、全体としていい方向に行くだろうということですね。

そうそう。私もよく「企業やブランドがやらなければならないのは、サステナブルよりレスポンシブルだ」という話をするんですけど。

例えば原料や生地を作っている人は、彼らなりに「サステナブルってなんだろう?」と考えたものを勝手に作り出す。私たちはそれを使って、製品の企画や販売の仕方を追求するという形で、自分たちの責任を全うする。いろんな領域、いろんなセクションでそれぞれがそういう風に考えだすと、いいサイクルが回っていくんじゃないかと思うんです。

撮影は長野の古着屋「トライアングル」で行った。写真左・青木寛和さんは「この2、3年でも環境に対する意識はすごく変わってきている。今、10代の人はもっと無理なく当たり前にサステナブルな生き方をしていくんだと思う」と語る

「優しい目線」が社会をいい方向に変えていく

結局、エシカル、サステナブルの文脈にはたくさんの論点があるから、「◯◯してないじゃん!」という言い方はいくらでもできるんですよ。揚げ足を取ろうと思えばいくらでも取れてしまう。それよりは「何にフォーカスしているか」という視点で見た方が建設的なんじゃないでしょうか。

私が若い人から「買いたい服がない」「どうしたらよいですか?」と聞かれたときは、そんな風に言っています。「環境にいいものだけを着たい。けど、それができない」と悩んでしまうのは辛いですから。であれば消費者の側も、優しい目線で買い物をしたらいいと思うんですよね。

── 優しい目線?

エシカル、サステナブルといった話題には暴力的なまでの「正しさ」があるから。その「正しさ」を振りかざすようなコミュニケーションをしてしまうと、自分が批判されているように聞こえるから、どうしても壁を作ってしまう。ATフィールド全開になっちゃう。そうすると結果として、社会はなかなかいい方向に進んでいかないじゃないですか。

自分もそうだし企業もそうですけど、やっぱり間違えるんですよ。そのダメさを許容するというか、全部が全部完璧なわけがないので、「たくさんある論点のうち、このブランドは何にフォーカスしているのかな」「自分の大切に思う価値観と一致しているのはどこかな」という目線で選べばいいんじゃないかと。

── いいところに目を向けて、いまは不完全だけど見所あるから、自分が買うことでいっちょ育ててやるか!というような?

そうそう! 株を買うとかではないですけど、そういう消費者って、小さなインベスター(投資家)だと思うんです。買い物には投票とか投資の側面があります。

さっき「未来は明るい」って言ってましたけど、本当にそうだなと思いますね。だって、買う人の要求が高くなればなるほど、社会はどんどんよくなっていくわけだから。という意味では、古着を買っている若い人はやっぱり一番先進的。そこに対して答えを出していく、出せる人が現状はまだまだ足りないので、「だったら古着でいいや」となっているだけで。

── そこに答えを出せる事業者が増えていけば。

そうです。そこに対して自信を持ってオファーできる人たちが出てくれば「新品も悪くないよね」という話になると思うし。逆にそういうブランドが長く続くように、自分たちが票を集めようという感覚を消費者一人ひとりが持つことが大事なんじゃないでしょうか。

ポジショントークのように聞こえるかもしれないですけど、私自身もそういう消費者でありたいと思ってます。その結果選ばれるのが自分たちだったら、イチ事業者としてもちろんうれしいですけどね。

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