「スーパーにはない魚が買える」茅ヶ崎の人気鮮魚店が果たしている大事な役割

※こちらはGyoppy!で発信したい思いのある方から寄稿された記事です。
突然ですが、魚が獲れる地域にお住いの皆さんに質問です。最近いつ、地元で獲れた「地魚」を食べましたか?
昨日ですか? 先週ですか? それとも、どこで買えるのか分からないですか?
この記事は、「地魚を食べよう!」と言いたいわけではありません。食べたいと思う人が、食べれば良い話だと思います。
ただ、私が住む茅ヶ崎には「地魚」にこだわるカッコいい魚屋さんがいます。なぜ、彼らは「地魚」にこだわるのでしょう? そこには、地域の魚文化を守るために役割を果たしたい、という思いがありました。

商店街の元気な声の主
茅ヶ崎には、「雄三通り」という駅前の商店街通りがあります。
地元の商店で賑わうこの通りは、かつて加山雄三さんのご自宅があったことからその名がつけられました。
Gyoppy!でも加山雄三さんが「物心ついたら茅ヶ崎の海があった」とおっしゃいましたが、まさにこの雄三通りを歩いて海に行っていたことでしょう。
茅ヶ崎駅を降りて、雄三通りを歩いていると海の方から「いらっしゃいませー!」という元気な声が聞こえてきます。
「相模湾で獲れたてのアジがあるよー!」とか、「今日は茅ヶ崎の生シラスが入ってるよー!」とか、そんなことも言っています。
その声の主が、株式会社魚卓(うおたく)の代表・浅見卓也さんです。

魚卓には一日数百人が訪れます。いつ行っても、地元のお客さんで賑わっています。
日本全国で地域の魚屋さんが急速に減っていくなか、これだけの人気を誇る魚卓の代表、浅見さんとは、どんな人なのでしょうか。
地元だから余計に、お客さんに失礼があっちゃいけない
浅見さんは茅ヶ崎で生まれ、"ラーメン屋のせがれ"として育ちました。
「小学生の頃からお店に出て、お客さんや近所の人とよく喋っていたんですよ。だからいまでも地域の人たちみんな知り合いみたいな感覚があって。」
中学校を卒業後、15歳から隣接する藤沢市の鮮魚店で働き始めた浅見さんはそこで魚の商売を叩き込まれます。魚が大量に獲れ、大量に売れていたバブルの時代。いまでは学べないことがたくさんありました。
「とにかく良い魚を、商売できる価格でたくさん仕入れること、それをあの手この手で売り切ることを経験できました。」

浅見さんは20年ほど経験を積んだのち、地元の茅ヶ崎で「魚卓」を創業しました。
「地元で魚屋を始められて本当に良かったんですよ。なぜって地元だと自分が知らないうちに応援してくれる人たちがいて、そうすると余計に失礼があっちゃいけないと思って商売ができますから。」
地元で客商売を見ながら育った浅見さんは、それまで培った"魚で商売する力"を地域に還元しています。そしてその還元は、地元の漁師さんたちにも向けられています。
地魚を売ることは魚屋の大事な役割
魚卓にはその日獲れた魚が並んでいます。朝には朝獲れの魚が、午後には昼獲れの魚が並ぶので、いつ行っても鮮度抜群の魚が買えます。
「やっぱり"たて"の商売って良いじゃないですか。獲れたて、切りたて、作りたて。その"たて"が見られるとお客さんも安心するし、子どもなんかも喜びますしね。」

実際、魚卓には子どもがよく遊びに来ています。毎日色んな魚が泳いでいるのが見られるので子どもにとっては遊び場の一つ。魚の神経を抜くところを見せると「わー!」っと喜ばれます。
鮮度の良い魚を仕入れるためには "目利き"の力と、それ以上に漁業関係者との"信頼関係"が大切になってきます。
「ウチはスーパーの鮮魚コーナーに並ばない魚、要は売れづらい魚もどんどん仕入れるんですよ。特に地元の漁師さんが獲った"地魚"は市場より高くてもできるだけ余さず買い取って、利益がでなくてもその日のうちに売り切るんです。お互い助け合わないと続かないですからね。」

魚卓は"利益率"ではなく、"売上金額"をみて商売をします。この方針は非効率にも見えますが、長い目で見ればそうではありません。地元の漁師さんが獲った地魚にちゃんと値がつくことは、その地域の魚文化が守られるために大切なことです。漁業で人を雇い、しっかり生活ができないと文化も持続できません。
「色んな魚があった方がお客さんも喜ぶんですよ。飲食店さんなんかもよく来てくれて、珍しい魚があるから喜んでくれますしね。"スーパーでは買えないものが魚卓なら買える"のはすごく価値があるじゃないですか。だから地魚なんかはまさにうってつけで、地魚を売るっていうのは漁師さんからもお客さんからも求められる魚屋の大事な役割なんです。」

魚離れが進み、家では魚を食べない人も多いと思います。
また地元の商店に入ること自体、抵抗がある人もいることでしょう。
でももしかしたら、そこに一歩足を踏み入れることで新しい世界が広がるかも知れません。そのきっかけとして、魚屋さんはいかがでしょうか。
そこには子どもが喜ぶ色んな魚や、カッコいい店長さんがいるかも知れません。それに、そこで地魚を買うことがいろんな人を支える一助にもなっていますから。
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文小野寺将人
Twitter: @roolues
Facebook: masato.onodera.3
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魚卓の店主が選ぶ、相模湾の鮮魚詰め合わせセットなどを販売しています。地魚を食べることは、地域の魚文化を守ることにつながります。